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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 19-5

携帯が鳴る。

「春陽、着いたぞ。準備が出来たら降りてこい」
「はい」

俺はバッグを持ってアパートの部屋を出る。
しっかり施錠を確認して階段を下りた。
「わざわざすいません」
運転席の窓から身を乗り出しているお父さん。口には見慣れたタバコをくわえていた。
「おうよ」
俺は助手席に乗り、シートベルトを締める。
それを見計らってお父さんは車を発進させた。


お父さんとの出会いは衝撃的だった。

だが俺は、すでにその時からこの人の強さに憧れを感じていたのだと思う。

たしかにやることは無茶苦茶だったが、しっかりとお父さんは家族を守っていた。

お母さんだってそうだ。
優しくて娘思いのいいお母さん。
正直、奏が羨ましかった。
奏もあんな人になるのかな。



途中、コンビニで酒を買い込みつつ、二十分ほどで奏の自宅に到着した。

お父さんと共に玄関に足を踏み入れる。
「帰ったぞー」
「お邪魔します」
すると真っ先に車椅子に乗った奏が顔を出した。
「お帰りなさい」
「ただいまーっと」
お父さんは奏の頭を一撫でして奥に入っていった。
「お邪魔するな」
「春陽さんも、お帰りなさい」

胸が高鳴った。

「奏…」
「んっ」
さっとしゃがんでこっそりと奏にキスをした。
今ならキスしたって許されるんだ。

俺たちは恋人同士なんだから。

「はーるーひーさーんっ!お父さんとお母さんにばれたらどうするんですか!」
奏は小声で文句を言う。
「いや、なんか胸が高鳴ったんだよ」
「言い訳になりませーん!」
「はは、ほら、案内してくれ」
「はーい…」
居間に入ると、すでに沢山の料理がテーブルの上に並べられていた。
「…すごいですね」
「せっかく春陽さんに来て頂いたんですから」
お母さんは笑顔で食器を並べてくれる。
「私も手伝ったんですよ」
「はいはい」
「もおーっ!春陽さん、さっきからテンションおかしいですっ」
「悪い悪い、本当に楽しくてな。この家族に入れてもらえるのが幸せで。嫌でもテンションが高くなる」
「……」
「……」
「臭い台詞を吐くようになったな、春陽よ」
シャワー上がりのお父さんがパンツ一丁で現れた。
手に持ってある珈琲牛乳には流石につっこむ気がしなかった。
「もうこの家はお前の家でもあるんだ。いつでも遊びに来ればいい」
「……」
「……」
「お父さんも臭いっすよ」
「……てめえ」


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