「偽り」の恋愛から〜不器用な愛〜-2
そして引っ越し当日。
持って行く物は少ししかないから、簡単だった。
そして軽く朝を取って、家を出る。
エレベーターを降り、ドアが開いた瞬間。
マンションなため、ドアを出たときに真っ白に見えた。
辺り一面が白くて、それに慣れたとき、
あいつがいた。
悲しんだ顔で、あいつはいた。
「昨日のこと、全部玄関で聞いていたの」
「ああ」
「あなたの気持ちを聞いたとき、とても嬉しかった。私のことを好きでいてくれて、嬉しかった。私があなたと会ったとき、私は道路でつまずいて倒れていたときに、手をさしのべてくれたの。その時に私はあなたの優しさに気づいて、好きになってしまった。だから告白されたとき、嬉しくて、悲しかった。なんでわたしなんかと付き合ってくれるのかな、と思ったの。正直、罰ゲームが理由だったと聞いたとき、悲しかった」
「……」
「でもね、もういいの。あなたが私のことを好きでいてくれているから。ありがとう」
「……」
「私はあなたに助けて貰ったの。私は友達がいなかった。ううん、作ろうとしなかったの。小さい頃に、私の大好きだった友人が亡くなったから…。その時から、ずっと私は他の人と関わろうとしなかった。また悲しまないために。だからね、あなたが恋人になってくれて、そして私と話してくれるようになって感謝してるの」
「……」
「だけど、そんなあなたも、海外に旅立ってしまう。私はまた独りになっちゃう……。私、また独りになるのは嫌。あなたがいてくれないと、また弱くなっちゃう……」
っと、あいつの目から涙が溢れる。
「こっちにおいで」
そう言って、俺はあいつを抱きしめた。
するとあいつは声を上げて泣いた。
俺にはあいつの想いが分かる。あいつと一緒にいたい。
だから、俺は―――
数年前のことだ。
俺には恋人がいた。
他から見ると、まさにベストカップル、と思われるほど、俺は彼女の事が好きで、彼女は俺のことが好きだった。
これが当たり前のことだと思っていた。
だが、それは崩されてしまった。
交通事故。
彼女は歩道で俺を待っていたのだが、俺の目の前で、突然車が彼女のところに突っ込んできて……。
彼女は即死だった。
俺はその場にいながら、彼女を助けることが出来なかった。
とても悲しくて、自分を悔やんだ。
いっそのこと、俺も死んでしまおうかと思った。
だが出来なかった。俺自身を殺すことはできなかった。
そして迎えた葬式に、泣きながら彼女と別れた。
とても苦しくて、心が押しつぶされそうだった。
だから俺は決めた。もう人とは一線を越えて関わらないと。
こんな悲しむことの無いように、もう付き合わないと。
元々親が普段から居なかったため、俺は家を離れ、一人暮らしをした。
仕送りだけの生活。もう、それには慣れていた。
でも俺は変わったのだ。
あいつと出会ってから。
俺自身驚いた。周りからまるで人が変わったかのように、優しくなったと。
あいつと出会ったことにより、全てが変わった。
だからいつの間にか、俺にとって大切な存在となった。
もしかしたら、彼女と重ねているのかもしれないな。
だけど彼女はいない。あいつはあいつなんだ。俺はあいつを大切にしなきゃいけない。
これから先、ずっと。
結局、俺は海外に行かなかった。
あいつと一緒にいたいから。
俺は学校をやめ、親に仕送りをしてもらいつつも、仕事に就いている。
それに、俺とあいつは結婚することになった。
あいつが学校を卒業した次の日に。
お互いの両親に想いをつげ、認めて貰ったのだ。
これから先も、俺はあいつのことを大切にする。
あいつのことをずっと好きでいる。
だから―――
俺は、君を泣かせたくない。
一緒にいたい。永久に。
「あなた、これからもずっと、一緒にいようね」
「ああ、もちろん」
俺はこいつと一緒にいたいと思う。
おまえも、認めてくれるよな?