「中空の庭園」-6
「舞。一緒にいこう」
こくりと頷くと同時に、抽送が一段と激しさを増した。
収縮を繰り返す胎内に、自分のものではない熱が繰り返し注がれる。
それは、幸せだった。
夢にだけ見る、一時の幸福だった。
このまま、目が覚めなければいいと願うが、夢はあっさりと終わりを告げる。
シュッと言う衣擦れが聞こえたかと思うと、舞の視界が明るくなる。
そこは現実だった。
太陽が陰り、二人の影を長くしている他は先程までと何ら変わりはない。
舞の胎内から抜け出たそれを仕舞うと先輩は立ち上がった。
うっすらと汗ばんでいる他は先程までの情事の後を感じさせる様子はない。
「さてと、僕はそろそろ行こうかな。アリスも早く帰らないと見世の人に怒られるんじゃないの?」
言われて舞の顔が青ざめる。
楼主が迎えに来る時間はとうに回っていた。
慌てて制服を着直す舞を後目に先輩はひらひらと手を振り森の奥へと消えていった。
ピリリリリリッ!
鞄の中から鋭い音で着信音が鳴る。
その音はこれまでに何度、舞を呼んだのだろうか。
半べそになりながら鞄を漁る舞の様子を木々の隙間から見ている人物がいた。
かなり前から覗いていたのだろうが、舞がその人物に気付く様子はない。
バキィッ!!
その人が握りしめていた枝が折れる派手な音が辺りに響いたが、楼主に謝罪の言葉を繰り返す舞の耳に届くことはなかった。