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ウソ
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ウソ×C-3

ったく、睦月もめんどくさい事思い付くよなぁ。何が『ハプニングの後の方がデートは盛り上がる』だ。
真っ暗な階段の踊り場でパンをかじりながら時間が過ぎるのを待った。
『松田が携帯を閉じた瞬間に事務所に入るのよ?できるだけ必死っぽくね』
…俺に芝居しろってか。
引き受けちゃったものはしょうがないけど、気が進まない。でも二人分の飯代も貰っちゃったしなぁ。
主任に頼まれた分も片付けなきゃな。飯食った後に酒飲ませて松田ん家に行ってそれで―…
…俺、松田とそんなに仲良くねぇぞ?なのに深酒するほど俺に付き合ってくれるのか?
あぁ、時間だ。
事務所のドアに耳を当てると、予定通り中から聞き慣れた着信音がする。
『あたしの妹がノリノリで協力するから、上手くやってね』
まったく、姉が姉なら妹も妹だ。
『そんなに思い通りにいくのかよ』
『大丈夫、こっちは何パターンも考えてシミュレーションしてんだから。あんたは適当に話合わせて』
…ばか姉妹め。
言わないけど。
『もし松田に彼女の事を聞かれたら、とりあえず好きだって事を猛アピールしてね』
はいはい。
失敗しても知らねぇぞ。
ここまできたら、開き直ってやるけどさ。





「それが俺が事務所に行くまでの経緯だよ。その後は、説明しなくても分かるよな」
「ラーメン屋でデートしてたのも睦月の妹?」
「そーゆう事」
嘘つき姉妹め。
「…え、じゃあさ、あたしが必死で携帯探すフリしたりラーメン屋から離れようとしたのは」
「無駄な努力だ」
「そんな言い方ないでしょ!あたしはあんたが傷つかないように一生懸命で」
「だから飯おごってやっただろうが!まさか泣くとは思わなかったし、こっちにだって罪悪感があったし!!」
「おごるも何も睦月のお金でしょうが!」
「そんなもん返した!」
「は?」
「お前次の日、睦月に俺とヤったって報告しただろ。おかげでめちゃくちゃキレられたんだからな」





仕事終わり、予想通り睦月に呼び出された。
『どーゆう事?』
『…』
『あんた、松田とヤっちゃったの?』
『…』
『誰がそこまでしろって言った!?あたしはデートしろって言っただけじゃん!』
『…』
『黙ってないで何とか言いなさいよ!ちゃんと松田はいいって言ったの?』
こいつ、完全にキレてるな。
そりゃそうか。
一歩間違えたら婦女暴行だからな。
『部屋の鍵開けた松田にも非はあるけど、だけど―…』
鍵?
あ、そっか。こいつは俺が主任から合鍵を預かってる事知らないんだ。
『昼休みに松田から話聞いた時、訳分かんなくなってあんたと付き合えとか言っちゃったじゃない』
『…松田、それ聞いて何か言ってた?』
『何も言ってないけど、もう信じられない。あんた達がそんな事するなんて…』
『なぁ、睦月』
『何』
『これ、返す』
そう言ってポケットからクシャクシャになった五千円札を取り出した。
『使わなかったの?』
『うん』
『まさかこれが松田の値段じゃないでしょうね』
『なわけないだろ!俺はー…』


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