絶交チョコミント-1
「絶交よ」
「……どうしたいきなり」
それは、まだ照る日差しも暑い、9月半ばの事。
文化祭前で皆が忙しく準備に走り回っている頃、買い出し組となった私達は、買い出し帰りの道中をアイスを食べながら歩いていた。
外はまだまだ暑いし、学校までの道のりは長い。
重い荷物を持って歩くのだから、まぁこれくらいのご褒美はあってもいいだろう……ということで、二人してアイスを買った。
……買ったの、だが。
「……まーださっきのアイスの事でご立腹ですか、水澄は」
アイスを食べつつ、隣を歩く男子が聞いてくる。
水澄 小羽(みすみ こはね)というのが私の名前。
なかなかイイ名前を付けてくれた、と両親のセンスには感謝している。
「当たり前。吾妻は、それだけの事をした」
「んな大袈裟な……」
男子――吾妻 創史(あがつま そうし)は苦笑いで答える。
反省の色が見られない。
「大袈裟じゃない。チョコミント味の恨みは、決して小さくはないんだ……!」
「さいですか……」
呆れたように呟く吾妻。
その手にはチョコミント味のアイス。
そして私の手には、メイプルバニラ味のアイス。
要するに、さっき起こったのは次のような事である。
〜〜〜〜〜〜
5分程前。
買い出しも終わり、それぞれ手に荷物をぶら下げて店から出てきた。
「いいよね、アイス買うくらい。食べるくらい」
「いいんじゃねーの?経費で買うワケじゃないし」
「そうと決まれば、確かこの辺にアイスの自販機があったはず……」
「お、あった。アレじゃね?」
吾妻の指さす先には、おなじみセブン〇ィーンの自販機。
「それじゃ早速……ってあら?財布はどこに行った?」
「さっき鞄の中に入れてたじゃんか。……先に買うぞー」
そう言って吾妻はお金を入れて、さして迷わずにボタンを押す。
財布、財布……あった!
私のお目当ては当然、チョコミント味。
そこは譲れない、確固たる信念があるのだ。
セブン〇ィーンアイスと言えばチョコミント!これに限る。嫌いな人も結構いるが、私にはあのスッキリとした甘さがたまらない。