絶交チョコミント-2
「さってと、チョコミント……あれ？」
目指すボタンには、赤いランプで『売切れ』の文字。
……えーっと。これは。
「嘘だぁぁー……」
「何だ変な声出して。どうしたんだ水澄よ」
変な声とは失礼な。
あんたにチョコミントを手に入れられなかったこの悲しみの、いったい何が分かると……、っ!?
恨めしげに振り返った私の目に映ったのは、
「……吾妻。あんた、それ……」
「ん？チョコミント味だよ。嫌いな奴も多いけど、美味いんだよな、これ」
……吾妻がチョコミント味を持っていて。
売切れランプが点灯しているということは。
「あ……あ……」
「……あ？何が言いたいんだ水澄。暑さにやられたか？っていうか、アイス買わないのか？」
脳天気にも、そんな事を聞いてきた。
「あんたがラストチョコミントを奪いやがったのかぁぁっ!!」
「うおっ!?何だいきなり!?こら、叩くな！アイスが落ちる!!」
〜〜〜〜〜〜
……以上である。
結局私はメイプルバニラ味を買ったのだが、どうにも腹の虫は収まらない。
それで、冒頭の一言に戻る。
まぁ、吾妻だって狙ってやったワケじゃないのは分かっているし(っていうか、もし狙ってたんならぶっ飛ばす)、私はチョコミント好きに悪い奴はいないと信じている。
それでも、恨みはするが。
「絶交、ねぇ……」
アイスを食べ終えた吾妻が、手持ち無沙汰にゴミをぶらぶらさせながら呟く。
「困るな、それは」
「……困るの？」
「まぁ、それなりには」
意外な返答だった。
……いや、意外でもないか。吾妻とは単なるクラスメートではあるが、仲が悪いワケではない。
むしろ、男子の中では仲が良い部類に入れて問題無いだろう。
それに、イイ奴でもある。
実際は、吾妻も私も買い出し係ではない。
たまたま今日、本来の買い出し係が休んでしまったのだ。
代わりに誰かが行かないと、材料が揃わない。
しかし、誰だってこの暑い中を荷物を持って歩きたくなんかない。
誰もが面倒くさがって行きたがらず、事態が硬直していたところを打破したのが……吾妻だった。
「あー、じゃあ俺行くわ。今日はあんま仕事無いし」
でも、さすがに一人だとかなりの荷物になるので、同じく今日は手が空いていた私も手伝う事にしたのだ。
私だって嫌いな奴とは絶対に組まないだろうし、そう考えると……吾妻はイイ奴だと思っているのだろう。
ま、それとこれ(チョコミントの件)は話が別だが。