絶交チョコミント-4
文化祭から半年。
三月半ばの今日も、私と創史は休日を利用してバスに乗って出掛け……今はその帰り道である。
さて、今は何時だろう?
外は夕焼け。赤い光が車内に差し込んでいる。
左手の腕時計を見ようと腕を上げ、
「………あ、……」
そこでやっと気付く。
腕時計をしている左手は、……創史の右手としっかり繋がれていた。
………うゎ。コレは。
とっさに車内を見回す。
幸いと言うか何と言うか、私達以外の乗客はいなかった。
良かった。さすがに仲良く手を繋いで寝ているところなんて、他人に見られて嬉しいものじゃない。
……ま、する事自体は全然構わないんだけど。
(………創史の手、なんかあったかい)
繋いだ左手が、暖かかった。小さい子供なんかは眠たいと手がポカポカしてくるけど、そんな感じ。
ふと、夢の中での私達の会話が頭に浮かぶ。
――うーん、そういえば絶交って具体的にはどうすればいいんだろ?――
――それをする相手に聞くかね……。そりゃ、あれだろ。読んで字の如く、『交わり』を『絶つ』んだろうよ――
今、私達の手は繋がっている。
私達は、交わっている。
「『交わりを絶つ』だなんて……とんでもない」
あのとき絶交しなくて、本当に良かった。偉いぞ私。
あの日、もし創史がチョコミント味を買って、しかもそれが売り切れていなかったら……私達は多分ここにはいなかったのだろう。
……そうだ。今日は、久しぶりにあの自販機でアイスを買って帰ろう。
味はもちろん、チョコミントで。
チョコミント味で始まった関係なんだから、……たまには始まりを思い出すのも、いいかもしれない。
降りる停留所が近付く。
創史を起こそうと思ったけれど、やめた。
せめて、停留所に着くまでのあと少しの間だけ。
少しでも長く、長く。
この『交わり』を繋いでいられるように、と。