絶交チョコミント-3
「……うーん、そういえば絶交って具体的にはどうすればいいんだろ?」
「……それをする相手に聞くかね」
何とも微妙な顔で呟く吾妻。それでも一応考えてくれたようで、
「そりゃ、あれだろ。読んで字の如く、『交わり』を『絶つ』んだろうよ」
「まじわり……?」
「を、絶つ」
絶つ、と言って、吾妻は右手の指で輪っかを作り、左の手刀でそれを断ち切る動きをしてみせる。
交わり、ねぇ……。
「……なんか、『交わる』って言うとさ、吾妻と私がエロい事してた関係みたいじゃない?」
「エロい事ってお前……。多分、絶交って言葉をエロい意味に捉えたのはお前が最初で最後だと思う」
呆れ顔の吾妻。
「まぁ、そういうわけで絶交は無しね、無し。私と吾妻が交わってたって誤解されちゃうし」
「そんな愉快な勘違いするやつはいないと思うけど……。絶交されないのは、ありがたいな」
「その代わり、今度どっかでチョコミント味のアイスを奢ってね」
「……………。…………、………了解」
何か言いたげだったが、諦めたように手をヒラヒラさせて答える吾妻だった。
▼▼
――ガタン、
「………ん……」
緩い振動で目が覚めた。
そういえば、バスに乗ってたんだっけ。
……うん、まだ降りる場所には着いていない。寝過ごしてはいなかったようだ。
ちょっと安心。
(……あの日の夢、か)
そう、確かあれは半年前の文化祭の準備のときだ。
懐かしいような、……ついこの前の出来事のような。
隣に視線をずらす。
二人がけの席で隣に座っている彼も、やっぱり寝ていた。
……今ではお互い下の名前で呼ぶようになった、私の恋人――吾妻 創史の横顔に目をやる。
すやすやと眠る彼の寝顔は、何だか可愛いかった。
まったく。
寝過ごしたらどうするつもりなんだろうか。
「……まぁ、私も人の事は言えないか」
あの文化祭が終わってから、約束通り私は休日に創史と街に繰り出して、チョコミント味のアイスを奢ってもらい、ついでに色々と遊び回った。
それが意外にも楽しくて、それからもたまに遊びに行くようになって。
正式に付き合い始めて、色々あって。