MemoryU-6
『涼介…目ぇ真っ赤…。格好悪い。』
『うるせっ。誰のせいだと思ってんだっ。』
再び顔を見合わせた俺と楓は、思わず吹き出した。
笑顔で見つめ合う2人。
これ以上幸せなことってあるか?奇跡が起きたんだ。一番起こって欲しかった奇跡が。
『でも、何で全部思い出せたんだろうな。』
俺そう言うと、楓がふふっと笑った。
『これよ。』
楓が俺に一枚の画用紙を渡す。
『これってあの時の…?』
『そうよ。』
笑顔で楓は頷いた。…それは、俺と楓が付き合うキッカケとなった、彼女が初めて描いたあの俺の絵。
『これが壁から落ちて…だから、拾おうとしたの…そしたら…。』
興奮を帯びた口調で楓は話す。
『そうだったのか…。』
俺はそう言って、何度も頷いた。
『描き手の心が絵になる』
あの頃、俺はいつも楓にそう教えていた。
ひょっとすると…彼女のあの頃の俺への想いが、絵を通じて今の彼女に伝わったのかもしれない。彼女の持つ、俺への思慕の思いが。
俺は再び画用紙に目を落とす。ただの絵の具のかたまりなんかじゃない。それ以上の何かが、この画用紙には隠されていた。
『涼介…??』
楓が目をパチクリさせて俺を見る。気づけば…俺の手は震えていた。
『…大丈夫??』
『全然大丈夫なんかじゃねぇ。』
『えっ…』
楓の表情に戸惑いの色が走る。そんな彼女の表情を見て、俺の顔から微笑みがこぼれた。
『幸せすぎて、大丈夫じゃねぇよ。』
楓に笑顔を送る。
『ばかっ。ビックリするじゃない…。』
俺と楓は再び顔を見合わせて吹き出した。どうしようもないくらい幸せだ。
『なぁ…』
『んっ??』
『もうどこにも行くなよ。』
楓を見つめる瞳に力を込める。もう、こんな悲しい想いなんてゴメンだ。
『うん…。』
俺の言葉に、楓はコクンと頷く。
『ずっとずっと俺の側にいろよ?』
『それってプロポーズ?』
楓がイタズラっぽく尋ねた。
『かもな。』
俺も笑顔で答える。楓は少しだけはにかんだ。
『ねぇ…涼介』
『ん??』
『大好きよ…』
楓は頬を染めてうつむく。
『何度も聞いた。』
俺が意地悪そうに言うと
『じゃぁもういわないっ。』
と楓は頬を膨らました。そんな楓をみて、俺もははっと笑う。が、すぐに真剣な眼差しを取り戻した。
『……何度も聞いた…けど…何度でも欲しい。』
『涼介…。』
楓はこれ以上ないと思う程頬を染める。俺はそんな彼女の唇に軽くキスを送る。
唇を離した俺達は、再び見つめあった。そしてまた、どちらともなくキスを交わす。
―深いキスになった。唇の中で、お互いの温もりが溶け込む。
涙でぼやけた視界の中で、様々な色が溶け合い、教会のステンドグラスみたいに綺麗だった。