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桜が咲く頃
【ファンタジー 恋愛小説】

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桜が咲く頃〜変化〜-4

次の日。
日が傾きかけた、いつもの丘の上。
小春が先に歩き、後から矮助が歩いて行く。

『矮助様、知ってます?
今度、この近くの神社でお祭りがあるんですって。
私、矮助様と一緒に行きたいなぁ』
矮助は胸がずきりとした。

『ねぇ、一緒に行きましょう?』
くるっと矮助の方に向き直る小春。

『小春さん…』
苦しそうな矮助の顔。

小春から笑顔が消える。

『一緒には、行けない…』
絞り出すように言った言葉。

小春の表情が硬くなる。
『そっ、そうですよね。
矮助様お忙しいんですもの。
いいんです、気にしないで下さい。
ただ、代わりに…』
早口に言う小春。

『小春さん…』
矮助はそれを遮ろうとするが、更に小春は続ける。

『私!
私、矮助様が好きです!
好きなんです…』
真っ直ぐに矮助を見つめる小春。

矮助はその目が見れず、目を瞑り
『俺、好きな人がいるんです。
だから…もう小春さんとは会えません…』

小春はうつ向き何も言わない。

長い沈黙が二人を包み、矮助がそれを破ろうとしたとき
『では、今度のお祭りの日に、その人と一緒に来て下さい』
小春は顔をあげ、矮助を見つめて言う。

『矮助様の好きな人が、私よりずっと素敵な女性でしたら、諦めますから…』

『え…?』

『必ず連れて来て下さいね!』

そう言って、小春は走り去った。

一人残された矮助。

(え?連れて来て下さいねって、鈴を!?
普段男装している、あの鈴を!?
ムリだろ〜…)

途方に暮れてしまった……


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