陽だまりの詩 18-6
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クリスマス当日を迎えても、奏は目を覚まさなかった。
いくら医者が数日中に奏の意識は回復すると言っても、不安でしょうがなかった。
ひょっとしたら…
相変わらずマイナス思考の俺は、不安になってばかりだった。
俺が病室に入ると、お父さんとお母さんは黙って部屋を退出してくれた。
二人の時間を少しでも作ってくれるのは本当にありがたかった。
俺は眠っている奏の頬を撫でた。
確かに温かい。
「奏」
呼びかけたが反応は全くない。
「今日はクリスマスだぞ。プレゼント、ちゃんと持ってきたんだからな」
俺は持ってきた包みを開けると、小さな箱を取り出した。
「…メリークリスマス」
俺はそう呟く。
箱に入っていたペアリングの片方を、奏の細い左の薬指につけてあげた。
給料三ヶ月分の代物だった。
そして俺はその薄い唇に、静かに初めてのキスをした。
もちろん、それで目を覚ますはずがなかった。
「…奏、ずるいかな?でも許せよ。こうすれば、目覚めそうな気がしたんだ」
何もできない俺にとっては、これが最後の望みだった。
それからは、無心で奏の手をぎゅっと握ってやる。
そうしてただ時間は過ぎていった。