陽だまりの詩 18-3
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気が付けば朝だった。
窓がないので陽の光は入ってこないが、体内時計は確かに朝を指し、脳を起こそうと動いている。
いつの間にか眠っていたらしい。
お父さんが担いでくれたのか、俺は長椅子の上に横たわっていた。
ちくしょう…
なんて俺は腑抜けなんだ。
なんでこんなときに寝てるんだよ…
ゆっくり体を起こすと、顔に手をやる。
涙のせいか、顔はベタベタとしていた。
もう泣かないと決めたのはいつだったか。
つい最近のことだったような気がする。
それでも、これで涙が出ないはずはなかった。
「お…父さん」
視界の端にはお父さんの姿があった。
「…起きたか」
そうだ…俺のせいで奏が事故を…
そこで思考は完全に覚醒した。
「奏!奏は!?」
慌てて立ち上がり、辺りを見回す。
やはり、処置は既に終わっているようだ。
お父さんはずっと待ってくれていたのだろうか。申し訳なく思う。
しかし、謝るのは後だ。
奏は…どうなったんだ?
「先に顔を洗え」
こんなときでもお父さんは冷静だ。
だが、そんなことはどうだっていい。
早くおしえてほしい。
奏は助かったのか…?
「……」
しかし、我が儘を言い続けても意味はない。
俺は振り返って顔を洗いに向かった。
足は自然と勢いよく駆け出していた。