陽だまりの詩 18-2
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ナースステーションで集中治療室の場所を尋ねると、礼も言わずに向かった。
階段を駆け上り、ようやく集中治療室にたどり着いた。
「はぁっ…はぁっ…」
そこには、よくドラマで見るような世界が広がっていた。
大きな扉、その前には長椅子。
お母さんは椅子に座って虚ろな目で手をぎゅっと握っている。
お父さんは扉の前に仁王立ちしていた。
「はぁっ…奏…奏っ!!」
お父さんの横に立ち、息を切らしながら叫んだ。
「……春陽」
「はぁっ…お父さん…はぁっ…どうして…奏は…っ」
酸素を取り込もうと肺が暴れまわり、うまくしゃべれない。
「奏はお前へのクリスマスプレゼントを買いに出たらしい」
お父さんは低い声で確かにそう言った。
「……え?」
がくっと力が抜け、床に膝を着く。
嘘だろ…
それって…
俺の…せいじゃないか…
ガクガクと足が震える。
「お前のせいじゃねえ!」
お父さんは怒鳴る。
「そうですよ…」
お母さんも小さな声で言った。
「…そんな…俺が…」
しかし、俺の耳には届かなかった。
だって、俺のせいなんだから。
しばらくして、お父さんが言った。
「春陽、現場は見てきたな」
「……は、い」
皮肉にも事故現場は、俺と奏が初めて出会った交差点の横断歩道だった。
病院に来る途中で、何台もパトカーが停車し、ガラスのような破片が飛び散っているのを俺は見てきた。
すると、しばらく黙っていたお母さんは事の全てを淡々と話してくれた。
横断歩道に信号無視の大型バイクが侵入し、奏を避けきれずに激突した。
バイク自体は奏の足に直撃し、奏はそのまま倒れ込んで頭をコンクリートで強く打った。
現在、奏は意識不明で緊急処置を行っているらしい。
俺には祈ることさえもできず、罪悪感にとらわれることしかできなかった。
ただ何もできずに、時間だけが刻々と過ぎていった。