アイスクリームと蕎麦-1
暑い暑い暑い暑い!!
私は汗ばんだ手で握りしめていたシャーペンを机の上に勢いよく置いて、立ち上がった。
こんな日に勉強なんかできるわけない!!
私の部屋にはクーラーはついていない。ここにあるのはうちわだけだ。
窓を開ける。セミの声がやかましい。
「…コンビニ行こう」
私はため息をついて、現実から逃げ出すことにした。
アイスクリームと蕎麦
自転車で、少し離れた場所にあるコンビニに行く。「少し離れた」といっても、ここが1番近いのだから仕方無い。
自動ドアが開くと同時に変な曲が流れる。いや、曲ではないかもしれないが。
中は冷房が効いていて気持ちがいい。私は深呼吸をした。
そして、すぐ手前にあるアイスクリームのコーナーに手を伸ばし、冷凍庫を開けた。
冷凍庫の中にある沢山のアイスクリーム。しかし私が今欲しいのはアイスクリームなんかじゃない。
私はその冷凍庫の中に、自分の頭を突っ込んだ。
ひんやりとした空気。ほのかに香る氷と冷凍庫の匂い。
私はそっと冷凍庫の端を手でなぞる。キラキラとした氷の粒たちはその指についた途端に輝きをなくし、水滴となった。
それを見て、何だか悲しくなった。
氷の星がちりばめられたこの白銀の箱に拒絶されているようで。
冷たく甘いだけのアイスクリームに負けてしまったようで。
私はそっと目をつぶった。
ベシッ
「痛っ」
「いい加減にしないと、中のアイス溶けちまうだろ」
「……」
「…ったく」
誰かが私の首もとを掴み、冷凍庫から引っ張り出した。
いや、誰かは分かってるけど。