投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『僕の瞳に映るのは……』
【純愛 恋愛小説】

『僕の瞳に映るのは……』の最初へ 『僕の瞳に映るのは……』 7 『僕の瞳に映るのは……』 9 『僕の瞳に映るのは……』の最後へ

『僕の瞳に映るのは……』-8

(そっか……智則にはもう、あたしが見えないんだね……)

「嘘だろ!?だって、さっきまではちゃんと……」

(きっとね、お別れの時が来たんだと思うの……)

静かに……けれど、しっかりとした口調で茜は言った。

(あたしね、思い出したの……だからもう、行かなくちゃ……。でも、最後に智則に逢いたくて……)

耳に響く茜の声。だけど、微かに震えていた。

「よ、よかったじゃん!これで…もう、独りじゃ……なくなる…んだろ?」

笑え!笑えよ僕!!

たとえ姿は見えなくたって、笑顔で送ってあげなきゃ……それが最後に僕が茜にしてあげられるコトなんだから……

(離れたくないよ………。あたし、智則と居たい……逝きたくないよ……)

茜の泣き声が僕の胸を掻き毟る……

目には映らない。だけど僕には見えていた。泣きじゃくる君の姿が……

そして、僕の心は悲鳴の様な叫び声をあげる……

なんでだよ!最後の別れの時ぐらい逢わせてくれよ!!それぐらいの我儘聞いてくれたっていいだろ!?

悔しくて悔しくて、堪らなかった。だから僕は大声で叫ぶ。

「茜!!こっちに来いよ!僕のところに……」

無駄だってわかってた。
無理だってわかってた。

だけど僕は精一杯、両腕を拡げて叫ぶ。

そして、突然僕の胸に衝撃が走った。僕はその見えない何かを両腕でしっかりと抱き締める。

それは小さくて、柔らかくて、小刻みに震えていた。そして、僕の胸の方から啜り泣きが聞こえて来る。

これは現実なのか?それとも……そんなの、どっちだっていい!!

ゆっくりと霧が晴れて行き……そして、そこには君がいた。

「…泣くなよ、茜……」

胸が詰まる、声が震える。今、君が僕の腕の中に在る……それだけでいい。

やっと……やっと抱き締めてあげられた、君を……

「夢…なのかな?それでもいい……智則に抱き締めてもらえるなら……」

僕の中で君は呟いていた。
なぁ、神様。これはアンタが仕組んだのか?最後の粋な計らいって奴なのか?

けど、恨むぜ。こんな事されたら余計に切なくなるって、わかってないだろ?


『僕の瞳に映るのは……』の最初へ 『僕の瞳に映るのは……』 7 『僕の瞳に映るのは……』 9 『僕の瞳に映るのは……』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前