『僕の瞳に映るのは……』-7
「大っ嫌い……か。」
どのくらいここに座っていたのかわからないけど、僕は空を見上げて茜の言葉を繰り返してみた。そして多分、これでよかったんだって自嘲気味に笑う……だって、ハッピーエンドなんてありえないんだから……
でも、なんでだろう?胸が張り裂けそうだ……
苦しくて……
ただ、苦しくて……
苦しさの理由(わけ)、それは僕が彼女を傷つけてしまったから……
そして、君のコトが本当に好きなんだと気付いてしまったから……
その思いだけが深く、深く、まるで澱の様に心の中に積もっていく……
「どう言えばよかったんだよ!!」
誰もいない公園で僕は叫んでいた。
「茜日に見た君の顔が忘れられなくて、茜って付けたんだって言えばよかったのか!?」
僕の目に映る景色は淡く滲んでいく……
「泣いてる君を抱き締めたくて、ほんの一瞬でも同じ立場になれたら……そう考えたのはいけないコトなのか?」
想いは迸って僕の口から溢れていった。
「教えてくれよ茜……僕はどうしたらよかったんだ?全て話せばよかったのか?君を悲しませるってわかってるのに……」
ベンチに座ったまま、僕は頭を抱える。一粒、二粒、街灯に照らされた地面に雫が落ちた。
「ははっ、こんな僕でさえ痕を遺せるのに……」
わかってあげる事なんか無理だって知ってた。それでも僕は、何とかしてあげたかったんだ……
「ごめんよ……茜……」
まるで、僕の言葉に答える様に柔らかな風がふわりと首筋を吹き抜けて僕は顔を上げた。
「な…んだ……これ…」
思わず息を飲む。僕の目に映るのは、ただ一面の白い霧……
伸ばした手すら霞むほどの霧が辺りすべてを包んでいた。
(……智則……)
僕を呼んでる声がした。
もちろん声の主は……
「茜?…茜なんだな?」
(うん、ごめんね智則……貴方を信じてあげられなくて……)
「な、何言ってんだよ。茜のせいじゃないだろ?」
(あたし……嬉しかった。智則の気持ちが聞けたから……)
「き、聞いてたのか?」
(うん……本当にありがとう……)
「なぁ、出て来てくれよ。ちゃんと謝りたいんだ。」
僕がそう言っても返事は返って来なかった。そして、しばらくして悲しげな声が響く……