『僕の瞳に映るのは……』-2
「……手、握ってくれる?……」
「……どうして?……」
「あなたが知りたいコトがわかるから……」
なぜ手を握ればわかるんだろう……
どうして君はそんな顔で笑うの?
知りたい……
けれど、心の奥から声が聞こえた。
知ってはいけない……
知りたい……
知ってはいけない……
僕は知りたいんだ!!
心の声を振り払い、僕はゆっくりと手を延ばしていく…彼女の手を握る為に。
目の前にある、小さくて、白くて、柔らかそうな彼女の手……
なぜ握ればわかるのか、意味なんてわかんないけど、僕は彼女の手を握った。
確かに握った筈だった。
けれど握れなかった……
「な!!」
まるで、精巧なホログラムの様に僕の手の平は彼女の手を擦り抜け、掴むコトなど出来なかった。
『逢魔が時』……
魔に逢う時……
魔と呼ぶのは適切じゃないかもしれないけど、それでも僕の目の前にいるのは人に在らざる者だった。
「う、嘘だろ……」
知らず知らずのうちに、僕は数歩後ずさっていた。きっと、表情も強張っていたんだと思う。そんな僕に向かって彼女は小さく頭を下げた。
「……ごめんなさい。貴方を怖がらせるつもりなんてなかったの……。ただ、あたしに気付いてくれたコトが嬉しくって……。ずっと独りだったから……」
彼女の言葉を聞きながら、僕は中学校の頃の事を思い出していた。他愛のない言い争いから、しばらくの間クラスからシカトされた事があった……
学校の中、しかもクラスの中だけなのに気付いてもらえないという事がどれだけ不安で、どれだけ悲しかったか今でも覚えている。
けれど、所詮はクラスの中だけの事……でも、彼女は自分を取り巻く全てから、その存在を気付いてもらえなかったのだろう。それがどんなに辛くて、淋しくて、悲しいのか……いくら僕でも、それくらいはわかった。
そして気付いてもらえる事が、どれだけ嬉しいのかも……