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『僕の瞳に映るのは……』
【純愛 恋愛小説】

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『僕の瞳に映るのは……』-3

「無理しないでいいよ……怖いんでしょ?ホントにごめんなさい……」

それでも彼女は僕に笑顔を向ける。泣き顔と言う名の微笑みを……

少しづつ……少しづつ、僕の身体は彼女に背を向けていく……けれど、僕は視線を逸らす事が出来ないでいた。

そんな僕に向けて彼女は手の平を小さく振る……そして何か呟いた。その声は小さすぎて僕には聞こえない……

だけど仕草と口の動きで、はっきりと聞こえた……

(…バイバイ…)

って……


堪らなくて、僕は逃げ出した。彼女から逃げ出した……

でも、ほんの少し進んで足を止める。そして頭の中に蘇る彼女の台詞……

(…バイバイ…)

いいのか?これで……

不意に右手に痛みが走り、手の平を見ると余程力を入れていたのか爪痕が残っていて、血が滲んでいる。
手の平をしばらく見つめた後、僕はもう一度握りこぶしを作って、ひと呼吸置いてから自分の頬を殴った。痛みが走り、ジンジンする。

そして、大きく深呼吸すると彼女の方に歩き出した。そんな僕の行動は彼女の瞳にどう映っていたんだろう。ただ、驚いている事だけは確かみたいだった。

彼女のすぐ側まで来ると、もう一度大きく息を吸って僕は口を開く。

「あ、あのさ……話しを聞いてあげるくらいしか出来ないけど、それでもいいのかな?」

僕の言葉に彼女の瞳は、更に見開かれていく。

「怖く……ないの?」
「うん…。さっきはゴメン、凄く驚いたから……」

その時、彼女は初めて素顔を見せてくれた。震える両手を口許に添えると、ぽろぽろと涙を零す。

「……ありがとう……」

だけど、彼女の涙は地面に届く事なくシャボンの様に、弾けて消えた。

人に在らざる者は、涙さえ痕跡として残す事を許してはもらえないのだろうか……

堪らない程切なくて……
息苦しい程哀しくて……

すぐ側にいても、震えている華奢な身体を抱き締めてあげるコトすら出来ない……

慰めようとしても、どんな言葉をかけてあげればいいのかわからないんだ……

僕の心に浮かんだ、ありきたりの言葉……でもそれは、人に対しての言葉だったから……
だから、せめて少しでも明るい声で彼女に聞いてみる。

「僕は智則(とものり)って言うんだ。よかったら名前教えてくれないかな?じゃないと……」

君のコト、幽霊さんなんて呼びたくないから……

僕の思いが効を奏したのか、彼女は泣き止んだ。けれど、今度は少し呆れた様に僕の顔を覗き込む。そして小さな溜息……


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