jam! 第7話 『蒐蓮寺の怪夜 前編』-5
「――ハッ!」
鬼が、駆けた。
…………僕の方に。
「ッ!!マズい!逃げろリショー君!!」
……二階堂さんが叫ぶのが聞こえたが、
「もう遅い」
相手の言う通り、もう遅かった。
二階堂さんも悠梨ちゃんも反応するのが遅れ、二人共間に合うのは不可能な距離。
加えて僕は一般人である。こんなヤツから自力で逃げられるハズがない。
5mも吹っ飛ぶくらい殴られたら、多分死ぬ。
……あれ?もしかしてもう僕死亡確定?
世界がスローモーションになる。
鬼が迫る。
二階堂さんがこちらに駆けてくるのが見えるが、間に合わない。
あぁ、今までの思い出が走馬灯のように……………………見えてこなかった。
なんか切ない。
後10m。9m。8m。
体は竦んで動かない。
7m。6m。
あ、ヤバい。死ぬ。
5m。4m。3m。
……と、その時。
『――トシ君に……』
どこかから、声がした。
……いや、どこかから、じゃない。
僕の、目の前。
すぅっ、と目の前に何かが現れる。
右腕を振りかぶった姿で。