jam! 第7話 『蒐蓮寺の怪夜 前編』-3
「はん。どこの世界に結界張る住職がいるってんだ。笠なんか被って時代錯誤な格好しやがって」
「ほぅ?寺という場所柄を考えればそうおかしくはないと思う、が」
「あからさまに怪しいんだよ。だいたいテメェよ…」
すっ、と目を細め、
「……普通の人間とは違う感じがするぜ」
「……ほぅ?」
声に少し驚きが混じる。
「このタイミングでここにいるって事はよ、お前……この寺の結界が弱まってる件に何か関係あるな?」
「……ふむ。やはり感づかれていた、か」
さして驚いた様子もない。
「もっともあれだけ派手にやれば当然、か」
「認めたな。……やもりんの話だと結界は本堂の中らしいな。通してもらうぜ」
「それは無理な相談、」
瞬間。
男の姿が掻き消えた。
「だ!」
――速いっ!!
一瞬で二階堂さんの懐に潜り込み、
「お引き取り願おう、か!!」
振りかぶった右腕を叩きつける!
――ドガンッ!!
轟音が響いた。
二階堂さんが咄嗟に構えた黒刀の鞘と、男の右腕が衝突した音…なのだが。
ちょっと待て。
どう考えても生身の腕で殴った音じゃないぞ!?
「―――つッ!!」
二階堂さんが吹っ飛ぶ。
5m程飛ばされたあたりで受け身を取って着地した。
……人間がホントに『殴り飛ばされる』光景なんて初めてみた。
……いや、じゃなくて!
「二階堂さんっ!」
間髪入れず、男が二階堂さんに追撃をかけようと駆ける。マズい!
――その瞬間。
世界が、灰色に染まった。
これは………!