陽だまりの詩 16-1
俺は二つのダンボール抱えて美沙の部屋に入った。
最後に入ったのはいつぶりだろうか。
綺麗に整頓された部屋の中央にダンボールを置いて座る。
「思い出…か」
先ほどお父さんに言われたことを考えながら一つ目のダンボールを開けた。
どうやらこのダンボールは小物などを詰めているらしかった。
俺は丁寧にひとつずつ中身を取り出していく。
「あー、これ、美沙が小学生のときに買ってやったペンだな」
「お願い!これクラスですごく流行ってるの!持ってないのなんてあたしくらいなんだよ!?」
「お前がデパート行きたいなんてめずらしいこと言うから何が目的かと思ったら、そういうことか」
「お願いー!」
「げぇ、ペンのくせにこんな値段するのかよ」
「買ってー!買ってー!」
「お前は幼稚園児か!恥ずかしいだろ!ほら周りのお母さん達が見てる」
「……買ってくれなきゃやだもん!」
「……ったく、しょうがねーな」
「え?」
「その代わり、絶対に壊れるまで使えよ。たとえ流行りが終わってもな。物は大切にしろ」
「う、うん!約束する!」
「よし、いい子だ」
「…約束」
ずっと使ってたんだな。