陽だまりの詩 16-3
それは二つ目のダンボールを開けたときも同じだった。
二つ目のダンボールには、衣類が主に入っていた。
見たことはなかったが、きっと病室のクローゼットに沢山かけていたのだろう。
最初に出てきたのは、去年の誕生日に買ってあげたワンピース。
美沙は、こんなの着ないよ、なんて言ってたけど、翌日にはそのワンピースを着て、俺が来るのを待っていた。
美沙ははにかんで、兄貴、ありがとう、って言ってくれた。
涙を腕で拭いながら、続けてゆっくり一着ずつ出していく。
美沙の高校の制服もあった。
制服が可愛いから、という安易な理由で選んだ高校。
でも決してレベルの低い高校ではなかった。
美沙は、体が弱くても負けずに頑張っていたんだ。
そして、俺は最後の一着に手をかけた。
最後に三人でピクニックに行った日の上着だ。
その瞬間、あることを思い出した。
美沙が俺に内緒で書いていたもの。
きっと前に美沙が、やることがある、と言っていたのも、きっとあれだ。
断言できる。
この上着のポケットに入っている。
一息吐いて、ポケットに手を入れた。
「あっ…た…」
それは二つ折りした一枚の紙だった。
手紙と言うよりは、ただの紙切れに近いもの。
しばらくその紙を眺めていたが、俺は満を持して開いた。