セックスライフ-8
浣腸シーン撮影の前日―――
その日、彩の表情はどことなく硬かった。
それというのも、明日の浣腸シーンに備えた指導が、これから講師のプレイ場によって行われるからだ。
「おっ、来た来た!」
緊張を隠しながら颯爽と現れた彩に、監督が声をかける。
「彩ちゃん、いよいよ明日だけど、調子はどう?」
「バッチリよ。明日は盛大にいきましょう」
妖しく笑みながら席につく彩。
講師を中心に、さっそく打ち合わせが始まった。
講師が、持ってきた様々な浣腸器具を手にしながら、まずは取り扱いの説明を行った。
打ち合わせに参加している二人の男優が、しっかりとメモを取りながら熱心に耳を傾ける。
浣腸器具は、リアリティを出すために数種類の中からもっともポピュラーなガラスシリンダーの浣腸器を選んだ。
講師の話が進むにつれ、彩は異常に喉の渇きを覚えた。
眼の前に置いてあるお茶を、何度も口に運ぶ。
男優らは、それぞれに浣腸器を手にしながら扱い方を念入りに聞いている。
注入する薬液の量は、講師が独断で決めた。
まずはグリセリン液を100ml注入する。その後は、ぬるま湯のみ。
それが初心者にとってはベストなのだと言う。
ぬるま湯の量に関しては、これから実際に試してから決めたいと講師が言った。
「こ、これからですか? どうする、彩ちゃん?」
監督が心配そうに聞く。
「そうね……いっぱい排泄すれば、それだけ恥辱感が出せる。でも、実際どれだけ入るかよね。うん、やるわ。先生、宜しくお願いします」
彩の言葉に、男優ら二人も眼を丸くした。
「マ、マジかよ!? 撮影前にそんなことして、大丈夫?」
みんなの心配をよそに、やる気まんまんの彩。
講師も、撮影に支障は出さないと断言した。
講師は、男優らにも実技講習を行うべく、別室に待機させていたM女を電話で呼んだ。
M女がやってくると、全員がプレイ場に移動してさっそく浣腸の実技講習に入った。
床一面がタイル張りとなっているその室内は、どこへ排泄してもいいように排水溝まで設置されている。
講師の指示に、M女が即座に全裸となって四つん這いの姿勢をとった。
皆の前で、講師はまず手本を見せてくれた。
空の浣腸器に手馴れた感じでぬるま湯を吸い上げていく。
水位が200mlまでくると、浣腸器を持ち上げてノズルの先をズズッとM女のアヌスに突き刺した。
そして、注入時の注意点を再度口にしながら、遅すぎず、早すぎず、といったスピードでググッと液体を流し込んでいく。
M女の表情がわずかに強張った。が、講師はすぐに二回目を注入していった。
「いいですか、彼女の場合は慣れているからこの量が入ります。でも彩さんは初心者だから、これよりも少ない量しか入らないでしょう。いま彼女の中には400mlのぬるま湯が入ってます。これから排泄してもらいますが、それをしっかりと見ていてください」
講師の言葉に、みんなの眼がM女の尻に集中する。
「うっ……出ます」
息を呑んで見守る中、高々と持ち上げられたM女のヒップから、ブシャアアと勢いよく液体が噴射されてきた。
開いたアヌスから溢れ出てくる茶褐色の液体が、弧を描きながら床に着地していく様は圧巻だった。
短い時間の噴水だったが、液体がなくなった後の放屁がとてつもない屈辱感を表している。
講師が言った。この臭いを覚えておいてくれと。
「男優さん達は、いまのその表情を撮影のときにしっかりと作るんです。それがより生々しさを観ている者に与える。そして、液体の噴射が終わったあとのガス噴射。これは、浣腸をするときに少し空気を混ぜてやると効果が出ます」
講師が不気味に笑う。
彩は、本格的な浣腸の講義にゾクゾクッと鳥肌をたてた。
「それでは今から男優さんらに手ほどきをします。彩さん、服が汚れないよう着替えを用意していますので、それに着替えててくれませんか」
「いえ、私も裸になりますから着替えは必要ありません。それに、浣腸もここでやってください」
「ほう、これはこれは」
「ここにいるのは、みんな気心のしれた者ばかりですから。ねっ」
彩の言葉に、男優らと監督はひどく動揺した。
てっきり講師と別室で行うものとばかり思っていたから、驚きは一入だった。
講師による実技講習が行われるなか、彩は部屋のすみで静かに服を脱いでいった。