夏の始まり、夏の終わり(前編)-15
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
男は、手にした駄菓子を…笑顔で見つめていた。
「未来、どうしていくかが大切なんだと思います」
私は、男が言った過去…が男に対してのことなのか、男の子に対しての言葉なのか…
少しだけ迷ったが…
そんなことより…
彼の笑顔を見ることが出来た…
そんな嬉しい心が、あっと言う間に私を占領していった。
季節は、もう春だった。
私の中には夏も、秋も、冬も…
どの季節の中にも、男との想い出が残り始めていた。
スーツに身を包み…
この小さな田舎町の、小さな小さな空間の中でしか知らない男。
私は、この時すでに…恋をしていたのかもしれない。