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ウソ
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ウソ×@-2

「あと探してないの事務所の中だけなんだ、よろしく」
「…」
肩にかけたカバンの紐をギュッと握った。
めんどくさい事になってしまったと後悔しつつ、一番ベストな方法を脳みそをフル回転させて考える。
手と顔は探してるフリ。
書類の間を見たり机の下を覗いたり。
「悪いなぁ、松田。残業延ばして」
「別に、いいけど」
「今朝彼女から夜電話するってメール来ててさ、なのに何で今日に限って落としちゃうんだろ」
「神様のいたずらじゃない?」
「そうかぁ?」
そうよ。
あたしが拾ったのもそれ以外考えられない。
「松田ってそんな冗談言う奴だっけ」
本気なんだけど。
「なぁ、それよりカバン下ろせば?」
後生大事にカバンを抱えて携帯を探す(フりをする)あたしを不思議そうに眺める。
「いいじゃん」
「ふぅん?」
背中を変な汗が伝う。
とにかくカバンの中のこれをどうにかしなきゃ。いつ鳴り出すか分からないそれは携帯と言うよりむしろ時限爆弾。外に飛び出してきそうなくらい跳ね上がる心臓のせいで息苦しささえ感じる。
「なんか、悪いな。そんな真剣に探してくれて」
あたしのこの形相をそう捉えたか、この脳天気のスットコドッコイ。
「…どういたしまして」
寝ぼけた事言うなよ。あんたはフラれてるんだぞ?こうして携帯を探してるうちが華で、見つかった時点でバッドエンドだっつーの!
とにかくうまく小松と距離を取って、頃合を見計らってさも今見つけたかのように装おう。彼女からの着信について突っ込まれたら、とぼけ通すしかない。
「松田は彼氏いないの?」
「何、急に」
「そーいやそんな話した事ないなって」
「いたらこんな事しないでまっすぐ帰るよ」
「そりゃそうだな」
ゴミ箱を漁りながら小松はハハッと笑った。
一日分の紙屑と格闘しながらひたすら探し続ける小松に何となく聞いてみた。
「ねぇ、小松」
「ん?」
「そんなに彼女の事好き?」
「ったりめーだろ」
一瞬も迷わず答えやがった。
おかげで罪悪感が膨れ上がる。
「年下でさ、結構わがままな子なんだ。俺振り回されるの好きみたい」
「…へ―」
「引くなよ!」
「引くわ」
ほんと、引く。
こいつは本気で彼女の事が好きなのに、彼女の気持ちは一切こいつに向いてないんだから。
こっちの気が重くなる。
「あたし、ちょっとトイレ」
不憫で見てられない。事務所を出てそのままトイレに入ると洋式便所に腰を下ろした。
「はぁ…」
小松の携帯をカバンから取り出してじっと眺めた。あれから彼女からの着信がないって事は、彼女の中ではとっくに関係は終わってるんだろうな。
いけないと思いつつ折り畳まれた携帯を開くと、ディスプレイに写し出された待受画面に目を奪われた。
笑ってる、結構綺麗な女の子の画像。よく見ると右下には先月の日付。
これは小松の彼女?
先月まではこんな幸せいっぱいな顔見せてたくせに、一ヶ月で気持ちがひっくり返っちゃうんだ。
「…ちっ」
思わず舌打ち。
どこの誰かも知らない画面上の女の子が憎らしくてたまらない。
小松はあんたが好きで必死になって携帯を探してるのに、自分は小松をさっさと思い出に変えて新しい恋を始めるなんて、あんまりじゃん!あいつは電話をくれるって信じてるのに。その為にゴミ箱まで漁ってんのに―


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