陽だまりの詩 15-1
葬儀は着々と進んでいた。
俺は参列者から少し離れた場所に立ち、喪服のポケットからタバコを探り当てた。
その時は迷わず吸おうと思ったが、実兄の癖に、どうも不謹慎だと思われかねないので、それは躊躇われた。
周りを見渡すと、知った顔も勿論いれば、初めて目にする顔も沢山あった。
美沙の交友関係は意外と広かったんだな。
母さんはまだ外で泣き叫んでいる。
親戚が必死で宥めているが、もうあれからずっとそうだ。
なぜ俺は冷静なのだろう。
もう涙は枯れたからか。
美沙の体がまだこの場にあるからだろうか。
それとも、未だ現実から目を背けているからだろうか。
美沙がいない世界なんて、俺には想像できない。
もう何度、これは夢だと呟いただろうか。
俺の目は、虚ろなままだった。
しばらくぼーっとしていると、主治医が俺の前に現れる。
「……どうも」
「すまなかった……!」
九十度で頭を下げている。
「美沙さんを救うことが…できなかった…」
主治医の顔も、なんとなく老衰しているように見える。
「……いえ、あの日のことは…こちらこそ申し訳ありませんでした」
俺も同じように頭を下げた。