陽だまりの詩 15-7
「こんなことしてもらっても…立ち直れるわけではありません」
「……」
「やめてください…お父さん」
俺は体を引きずってお父さんの前に来ると、土下座をした。
「小僧」
その声は冷たかった。
「は…い」
「お前は妹が死んだことを認めているのか?」
急に突き放された気がした。
それは俺が望んでいたことであっても、胸はズキンと痛む。
「…わかりません」
「お前はもう認めている」
「…え?」
「見ろよ」
お父さんは俺の後ろを見る。
「…美沙」
振り返ると、美沙の遺骨が置いてある。
「こんなに部屋を散らかしていても、妹の骨は、大切に扱われてるじゃねえか」
たしかに、いつ置いたかもわからないくらい無意識であったが、それは丁寧に置かれていた。
「……」
カシャンと音がした。
お父さんは皿を洗い終えたようだ。
「…あ、ありがとうございました」
「どうってことねーよ。それよか、そのダンボールは妹の荷物だ」
俺が病院に行かないから、お父さんが持ってきてくれたんだろう。
「……重ね重ねありがとうございます」
「一つ一つ、思い出を噛みしめてから妹の部屋に置いてやれ」
「……思い出」
「そうだ、思い出だ」
お父さんはしゃがんで俺の両肩を掴むと、力強く言った。
「……」
「じゃあ、帰るわ」
「は…はい」
お父さんを玄関まで見送る。
「……そうだ」
お父さんはドアを開けると同時に振り返った。
「奏の心が壊れた」
「……え?」
お父さんの顔は逆光で見えなかった。
「踏ん切りがついたら、会ってやってくれ」
どういうことだ?
「あの…」
言い終える前に、ドアはパタンと閉まった。
「……」
奏が心配だ。
だが、俺は今しなければいけないことがある。
思い出…
俺は振り返ると、ゆっくりとダンボールに近づいていった。