陽だまりの詩 15-5
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今は既に親戚などの近しい者しかいない。
しかし、その場には奏とお父さんがいた。
奏はどうしても帰ろうとしなかった。
子どものように、やだやだと駄々をこねてしょうがなかった。
今から美沙は焼かれてしまう。
もう戻ってはこない。
俺は唇を噛んだ。
俺は美沙に何をしてあげられたのだろうか。
俺が今までやってきたことが、今ではちっぽけに感じる。
斜め後ろでは、奏が何かを呟いている。
そして美沙は、ついに焼かれ始めた。
その時だった。
「やめてえええ!!」
「奏?」
「おい奏っ」
奏は泣き叫び、床に膝から崩れ落ちた。
「いやあああ!美沙ちゃんを返して!!」
「……かな」
何も言ってあげることができなかった。
「嫌だ!美沙ちゃんがいなくなっちゃう!!」
しばらく奏は叫び続けたが、やがて疲れきったのか倒れてしまった。
「奏!」
俺とお父さんが慌てて駆け寄る。
「小僧、騒いで悪かったな。奏は病院に連れて帰る」
「…はい」
お父さんは奏を背負って出ていった。
美沙は奏にとって、初めての親友と呼べる相手だった。
その親友が突然この世界からいなくなる。
そしてついに形も残らなくなってしまった。
あの叫びは、奏にとってどんなに悲痛なものだっただろうか。
俺はいつまでもその場に突っ立って、全ての終わりを待っていた。