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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 15-4

***

「よう、小僧」
「……どうも」
お父さんが歩いてくる。
「お前、飯食ってねえだろ」
「……そうですね、最後にいつ食事をしたか覚えてないです」
「少しは食えよな」
「……善処します」
お父さんは他に言葉が見つからなかったのか、頭を掻いている。
「吸っていいか?」
「…どうぞ」
お父さんは横に立つとタバコをくわえて火をつけた。
それを見て、我慢できなくなり俺もタバコをくわえる。

もうどうでもいいや、世間体なんて。

「……奏はどうしたんですか?」
「ああ、まだ俺の車の中だ。踏ん切りがつかないらしい」
「……そうですか」
きっとあのとき、奏が震える手で携帯のキーを押し、お父さんを呼んだのだろう。
もしあのとき、お父さんが来てくれてなかったら、俺は大変なことになっていたかもしれない。
そんなことを考えていると、奏がフラフラと杖をつきながら現れた。
「……奏」
「春…陽…さぁん」
ひどい顔だった。
顔は青白く、虚ろな目をしている。
「…大丈夫か?」
「なんで…春陽さんは…そんなに元気なんですか…」
俺は胸をとん、と力なく叩かれた。
奏はそのまま俺に倒れかかってくる。
「…」
奏も美沙のことをいろいろと考えてくれていたんだな。
だがこの表情はとても不安だ。
「…お父さん」
「ああ」
奏はこの場にいないほうがいいのかもしれない。


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