陽だまりの詩 14-6
「お、兄貴いろいろ持ってきてるじゃん」
しばらく談笑していたが、美沙は飽きたのかバスケットを漁りだした。
手にはフリスビーが握られている。
「……いやな予感」
…は的中した。
「しっかり取りなさいよ!ロリ犬!」
「誰がロリだ!………わん」
例によってじゃんけんで負けた俺は犬役になってしまった。
というか、なんで人間と犬なのか。
人間と人間でいいじゃないか。
なにが、語尾に“わん”を付けること、だ。
奏はシートの上で笑っている。
「そりゃっ!」
「………」
なんという豪速球。
球ではないが。
力強く投げすぎたのか、大きくフリスビーは右に逸れる。
「っ!」
俺は持ち前の反射神経でフリスビーに飛びついた。
「おー、すごいわねロリ公」
「てめえ……わん」
「すごいです春陽ちゃん」
奏も手を叩きながらキャッキャッと笑う。
…ちゃん?
俺はすっかり犬になってしまったようだ。
何度か美沙の投げるフリスビーに飛びついていたが、美沙は疲れたのか奏にフリスビーを渡した。
俺のほうが疲れてるんだがな。
「投げるだけだから大丈夫よ」
「…うん」
奏は杖を使ってゆっくりと立ち上がると、フリスビーを構えた。
「いくよ、春陽ちゃん」
「……わん」
「それっ」
奏の投げたフリスビーは真っ直ぐ俺に向かって飛んできた。
「うまいぞ、奏」
俺は美沙に軽く投げ、美沙はそのフリスビーを奏に手渡した。
「ありがとう」
すると美沙は奏に耳打ちを始めた。
「奏、力いっぱい投げてみなさい」
「え?」
「いいから」
「なにやってんだー?」
俺が声をかけると、美沙はニヤニヤと笑いながら奏の横についた。
「…いきます」
奏はぐっと構える。
その刹那、力強くフリスビーを投じた。
「うおっ」
なんかすごい飛んでる。
奏の力には似合わない飛距離だ。
慌ててバック走で下がる。
「奏、すごーい」
美沙の声が小さく聞こえたが、構ってられない。
「よっ」
俺はバックしたまま後ろにジャンプした。
「あああああ!!」
だが、同時に後頭部に鈍痛を受けて数秒間、その場で悶絶。