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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 14-5

目的地は病院の裏手にある森林公園。
車を出してもよかったが、奏が歩くと言って聞かないのでのんびり歩いて向かうことに。

「ほんと、びっくりするくらい暖かいわね」
「そうだなー」
二人して空を見上げるが、変わらず太陽は眩しく輝いていた。
「奏、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
奏は額にじんわりと汗をかきながら、たどたどしく歩いていた。
「無理するなよ。きつかったらおぶってやるから」
何気なく言った言葉だが、奏はかぁっと顔を赤くした。
「……」

知り合って何ヶ月経っても、奏は変わらないな。

まあ、いつも俺はそう思っているのだけど。



一時間ほどで目的地に到着。

一面に芝生の広がる場所に腰を据えることにした。
くどいようだが、十二月とは思えない日差しを浴びたせいか、三人はすっかりへとへとだった。
「奏、美沙、どれがいい?」
クーラーボックスから飲み物を取り出す。
「あたしこれ」
「じゃあ私はこれで」
「ん。ちょっと待ってな、ビニールシート広げるから」
「いろいろありがと、兄貴」
美沙は無邪気に笑った。

シートの上に三人で座る。
「兄貴さ」
「ん?」
「年収いくら?」
「はぁ!?」
突然そんな話を振られてしまったらこんなリアクションしかとれないぞ。
「なんで突然そんなこと聞くんだよ」
「んー、奏を将来養っていけるかどうか」
「……」
こいつは本当に突拍子もないな。
というか奏の前でなんか言いたくない。
自慢できるほどの稼ぎじゃないし。
「私はそんなに食べませんよー!」
何を思ったのか、意味不明な否定をする奏。
「…きっとあのお父さんならしつこく聞かれかねないからねー。奏ラブだし」

十二分にありえる。

「ってお前、奏のお父さんに会ったのか!?」
「…え?」
俺と奏は同じことを考えただろう。
いくらなんでも美沙まで殴られたなんてことはないよな?
「奏のお父さん、とってもいい人よね」
お茶を含みながら美沙は笑う。
「は?」
「え?」
「ケーキはくれるし、なんか男らしくてかっこいいし」
「……」
「……」

あのおっさん、ただのロリコンじゃないよな?

どうやって美沙を洗脳したのだろうか。
もちろんケーキだけで美沙が人をほめるなんてことは確実にない。

じゃないにしても、本当にお父さんはよくわからなくなってきた。

最後まで疑問だけが残った。


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