「淫らな弔い」-7
「僕を受け入れるようにって言ったのになぁ」
面白がるような声音で呟くと、橘はまだ立ち上がっていた舞の胸先を指で弾く。
「んんっ…」
ハッキリとではないが、舞の口から艶めいた声がこぼれ落ちる。
「このまま襲っちゃうよ」
舞の耳元で囁いてみるが、舞は至極幸福そうな笑みを漏らしただけだ。
「別所さーん、まだ課題は残ってるんですけどー」
橘の呟きは虚しく宙に消える。
舞を羽交い締めにするように抱え込むと、橘は腕を前に回して舞の胸を揉みしだいた。
「んー」
間延びしたような舞の反応に橘は苦笑する。
「仕方がない。続きはまたにしよう。恐いお兄さんも睨みを利かせていることだし」
そのまま、舞を抱え上げると、傍らに用意されていた布団へと寝かせる。
髪を指で撫でつけ、頬に触れると、橘はゆっくりと顔を落とした。
「眠り姫、未だ夢から醒めず…か」
しばしの口づけ。
舌を絡ませることも、深く吸うこともない、ただの唇だけの触れ合い。
初めて遭ったときよりも、ずっとずっと清らかな寝顔がそこにはあった。
「お休み。舞ちゃん。いい夢見てね」
せめて、夢の中では辛いことのないように。
いつもいつも、自分はこの少女をひとり残し部屋を出る。
いつか…共に朝を迎える日が来るのだろうか。
いや、彼女の眠りを醒ますのは自分では、ない。
あり得ない幸福に首を振り、酔いを覚ますと橘は、楼の最奥へ向かって足を進めていった。