やっぱすっきゃねん!Ulast-8
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「ホラッ、ヘッドが下がってる。もっと肩口から振り降ろすように……そうそう!」
佳代が教育係になって2週間が過ぎた。
最初は上手く出来なかったが、母親加奈に言われたように徐々に笑顔も出せるようになった。
しかし、それは表面的なものだった。
「川口君。話があるんだけど…」
授業の合間の休み時間。有理が突然、直也に声を掛けた。
「…な、なにかな?」
「ここじゃちょっと…そこの渡り廊下に行かない?」
憧れの有理から呼び出されたのだ。
直也は浮かれ気分で付いて行く。
「何、話って?」
「…あの…言い難いんだけど…」
有理の俯き加減で頬を染める仕草を見て、直也は自分への告白だろうと思った。だが、
「佳代ちゃんの事なんだけど…」
「エッ?佳代の……」
「…そうよ。佳代ちゃんの事だけど。何か…?」
「アッ、いや…ハハハッ…」
有理の天然ボケぶりに、直也は勘違いしてしまった。
「…この間から変なの。見た目は前と変わらないけど、目に全く生気が感じられないし…」
「それ…本当に?」
「うん。尚ちゃんなんか、あんな佳代ちゃん見た事無いって。
だから、川口君なら、何か分かるかなと思って……」
直也の顔色がみるみる憔悴する。部活では笑顔も出て、むしろ良い方向に行ってると思ったが、全く気づかなかった。
「ありがとう相田さん。それとなく調べてみるよ」
有理は直也の手を握った。
「お願いね、佳代ちゃんは私にとって1番大事な人なの」
その悲痛な叫びに驚く直也。
と、同時に佳代が羨ましく思えた。
「オマエ、最近、喋んねーな?」
練習後の帰り。昼間の有理との事が直也の頭をよぎる。
「…そうかな?」
「練習の時も何だか覇気が無いっていうか、大人しくなって…」
佳代は黙って何も言わない。