やっぱすっきゃねん!Ulast-2
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翌朝9時。グランドに整列する部員達。
そこに佳代が飛び込んで来た。
「すいませ〜ん!」
いつもなら直也の小言を聞けば終わる光景。
だが、その日は違った。
「カヨッ、ちょっと来いよ」
達也から声が掛かる。
見れば、達也に直也、淳が列の前に立っている。
「…な、なによ…」
いつもと違う状況に戸惑う佳代。達也の言葉が、それに追い討ちを掛ける。
「こっちに来て皆に謝れ」
「…な、なんで、今日に限って…」
達也の冷静な言葉が、佳代の声を遮った。
「オマエは遅刻をして皆を待たせたんだ。今もそうだ。謝れ」
達也の迫力に気負される佳代。列の前へと立った。
「…皆さん。遅刻してすいませんでした」
一礼して列に戻ろうとする佳代を、達也は再び呼んだ。
「明日以降、遅刻はしないと誓え」
佳代の顔色が変わった。
「なんでっ!そ、そんな事言える…」
今度は直也が声を荒げる。
「オマエの遅刻のおかげで皆が迷惑してるんだ!!その程度の事も分からんのか!」
目をむき、怒号をとばす直也。その唇や身体は震えていた。
キャプテン達也と、副キャプテンの直也に淳。
〈組織を束ねる者として、けじめをつける〉
3人の頭には、前任者である直也の兄、信也の印象が色濃く残っていた。
それは佳代も分かっている。 頭では分かっているのだが、
「…皆さん。…こ、今後、遅刻しないよう…努力しますので……すいません…でした…」
目を真っ赤にさせながら、部員達に頭を垂れる。
自身、今まで受けた事の無いほど屈辱的な出来事だった。
その日、野球部の雰囲気は一変した。
練習の厳しさは以前からだったが、まだフレンドリーな雰囲気が漂っていた。
それが規律のようなモノが生まれ、終始緊張感の中で練習が進んでいった。