やっぱすっきゃねん!Ulast-10
午後1時。部員達が素振りをやり始めた頃、一哉と葛城はゆっくりとグランドを走りだした。
(アレ?コーチ何してるのかな)
2人は軽く10周走ると、水分補給をしてキャッチボールを始めた。
その時、いち早く素振りを終えた1年生を永井が呼び集める。
「水分補給をしたら、バッティング用ゲージをセットしろ」
永井の指示に、1年生達は慌てて用具入れへと取りに走った。
キャッチボールをする一哉のスピードが徐々に上がる。
(…クッ。これでも余裕なの…)
受ける葛城は顔を歪める。
「そろそろマウンドに行きましょうか?」
マウンドに向かう一哉に促され、葛城は設置されたゲージの奥に入った。
ちょうどその時、2年生の素振りが終わった。
一哉はセット・ポジションからあまり上体を捻らず、左足を踏み出し軽く右腕を振った。
だが、そのスピードとキレは凄まじかった。
「コーチのボール、久しぶり見たけど…」
改めて見せられた一哉の実力に、佳代は息を呑んだ。
それは、部員だけでなく葛城や永井も同様だった。
永井は部員達に指示する。
「1年生は各ポジション、それ以外はファウルゾーンに付け。
2年生はそこでタイミングを合わせてろ」
グローブを着けてグランドに散る1年生。
2年生は一哉の投球練習に合わせてバットを振っている。
葛城からの返球を受け取る一哉。
「じゃあ、ラスト行きます」
「…ハイッ」
一哉はやや上体を捻り、力を入れて投げた。
瞬間、ボールは葛城のミットを弾いてマスクに当たった。
「キャッ!…」
倒れ込む葛城。
「…大丈夫ですか?」
一哉はマウンドを駆け降り、葛城を抱き起こした。