異世界の放浪者 第六話-1
俺に抱き付いたまま寝息をたてるポポ。
ご飯前にキスされて俺はまるっきり反応出来なかった。突然の事で何も。頭の中ではふと感触が思い出される。
(たく…!よくわからん!)
ポポの気持ちが全然わからなかった。わかってやりたい。けどわからない。
今だってそうだ。何か変だと思ってこっち向かせたら抱き付いてきて…そんで寝るし。
ただ…向かせた顔は悲しそうだった。だから何を思っているのか俺は知りたいと思った。でもわかってやれない。それが俺をイライラさせる。
(もういいかな…)
そう思い寝ているポポを抱きかかえ静かにベットに寝かせた。
ポポの頬には涙のあと。俺に気付かれないように声を殺して泣いていたのだろうがバレバレもいいとこだった。体が微妙に震えていたからだ。あの震えかたは寒いとかそんなんじゃない。なにかに怯えてるような。そんな事を思った。
それとその涙を隠す理由だ。俺に心配をかけたくなかったからか…。はたまた弱い自分を見せたくなかったからか…。そして何に対しての涙か…。俺は知りたい。知らないといけない気がした。
日は上ってなかったが、外はほんのり明るかった。結局ポポに抱き付かれてから一睡もせず朝を迎えたのだ。その明かりで机の上にある紙の束を見つける。左端に2か所穴をあけそこに紐を通し止めてあり、手作り感あふれる本であった。
表紙を捲り、中を見た。
そこには何やら文字が書いてあったが何も読めなかった。フランス語か…そんな風に思わせるような字の形だ。書いてあるのはその表紙を捲った一ページだけ。
そのページに書かれていた文字は所々滲んでいた。
何故かポポの流した涙が頭の中に浮かぶ。
これを読めればポポの気持ちがわかるかもしれないが読めない。だからと言って他の人に渡して読んで貰うわけにもいかない。
(んー…ちょっと頭を冷やそう…)
そう思って頭をかきむしりながらポポの家を出た。
ただ何も考えず歩いていた。
まだ完全に日が上りきってないためなのかひとけがない。俺にとってはありがたい状況だ。今は一人でブラブラしたい気分だからだ。
「ちょっとそこの君!」
不意に何処からか声がした。俺は咄嗟に腰にかけてあったトンファーを持ち声のした方を振り向く。
そこには見覚えのある姿があった。
「あっ…君か。えと…登くんだっけ?」
そう言って構えていた杖を下ろす彼女。
「えっと…ミルラさん?」
トンファーから手を離す。
「よく覚えてたね〜。こんな時間にどうしたの?」
「散歩ですよ。ミルラさんこそ何を?」
「私は散歩混じりの仕事ね。一応警察だからパトロールよ」
そう言い大きな欠伸をする。
まぁこんな朝早いんだ。眠たくて当然だろう。
俺にはそんな眠気はないと言ったろ嘘になるが欠伸するほどでもないし、頭のなかはポポの事で一杯だった。眠いとゆう意識は遠のいていたのだ。
「この世界はね、日が上るまで家からでることは禁止なのよ?ポポさんから聞かなかったかしら?」
口に手を当ててモゴモゴ喋る。
「いいえ。全然聞いてませんけど…」
ポポと会話なんて俺の事を質問しまくることにひたすら答えるぐらいの会話だった。俺も質問するがポポが10の質問に対して俺は1といった比率だろう。ちなみに質問した項目にこの世界のルールどうのこうのなんてもちろん含まれてない。質問なんだから含まれるわけないか。
「んじゃ一応説明ねー。月がちょうど空のど真ん中ぐらいになったら朝まで外出禁止!以上!」
「わかりやすい説明ありがとうございます…」
取りあえずお礼を言っておこう。
「よーし。んじゃまたね」
ミルラは寝ぼけ眼で敬礼をして立ち去ろうとした。