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loop
【幼馴染 官能小説】

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loopU-5

「祐介は深読みしすぎだって。そんなの何もないから。」

僕が笑ってそう言うと、祐介も少し黙ってから、だよな、と笑った。


僕は相変わらずずっと烏龍茶を飲んでいたけれど、周りのアルコールの量はさっきにも増して多くなり、騒がしくなる一方だ。
時刻はもうとっくに二時を回っている。

四回生の僕たちは就職活動もだいぶ落ち着いて、まるで自由な時間は人生で最後だと言わんばかりに遊び回っているから、最近はこんな時間になるのも珍しくない。

もう少し経つと、つぶれた奴を僕が車で順に送り届けていくのもお決まりだった。

僕の隣にあまり知らない女の子が祐介の代わりに座っていて、でも僕のことを由紀ちゃんと呼んでいるから、割と知っている子なのかな、なんて適当に相槌を打ちながら、ぼんやりと眠たくなってきた頭の中の記憶を探りながら煙草に手を伸ばすと、空になっている事に気づく。

「ごめん、ちょっと煙草買ってくる。」

そう言って僕は席を立ち、店を出た。

外に出ると、店の中のアルコールの熱気も匂いも消えて、ほどよい冷気が火照った頬に当たって、少し距離のあるコンビニまで車で行こうかとも思ったけれど、それが気持ちよくてこのまま歩いていくことにした。

歩きながらさっきの祐介の言葉を思い出す。

僕が睦月と別れ、そもそも誰とも付き合うことをしなかったのは、幼なじみの遥の存在が大きいからだ。

―――僕の大切な人。

睦月が別れ際に、僕は違う人を見てると言ったのも、遥の存在に気づいていたからだろう。

小さな頃からずっと側にいた遥を僕は大切にしたかった。
けれどその反面、僕は怖くて遥に触れることができずにいた。大切にしたいと思えば思う程、どうしていいのか、大切に扱う自信がないどうしようもない僕は、側にいながらも、その想いを口にすることはなく、遠くからしか見守ることしかできずにいた。


高校生になったあたりから、遥は急に大人っぽくなって、綺麗になった。
もともと人見知りな性格から、あまり喋らず、近寄りがたい雰囲気を持っているから、面とむかって遥に付き合って欲しい言った奴は少ないだろうけれど、僕の知っている限り、陰ではいつも付き合いたいだとか、抱きたいだなんて、散々耳にした。

僕はそれをどんな顔をして聞いていたんだろう。

一度だけ、僕と遥が幼なじみだと知っている祐介に、遥が気にならなのかと聞かれた事がある。
僕はそれに何と答えたんだろう。

きっと、本当の事なんて僕は何も答えていない。

時々、ほんの時々だけれど、こうやって本当の事を言わずにいる僕が無性に嫌になる。
誰も僕を知らない。
僕も誰だってわからない。
それが楽だって選んできたのは僕だけれど―――。


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