不確かな可能性-2
「お前、また何かやらかしただろ」
夜、部屋に入って来たナオに笑われながらそう言われた。
「進路調査書、白紙のまま出したんだってな。福島先生、相当キレてたぜ」
「だってさ…」
私はため息をつく。
「あんなもん、適当に書いて出しちまえばいいんだよ。他の奴らだって大体はそうだし」
ナオはクラスの男子の名前を1人あげ、あいつが自衛隊入るタマかよ、と笑った。
「でも、こういうのって真剣に書くべきじゃないの?」
「まぁ、な。お前も受験生だし」
「じゃあ、やっぱり考えなきゃいけないんだよ」
そう言って、私はまた悩む。
そういえば。
「何でナオは先生になったの?そんな風には見えなかったけど」
「俺?」
ナオは首を傾げる。
「…そうだな、気がついてたらこうなってた」
「何それ」
呆れている私をよそにナオは苦笑していた。
「まぁな、人生、何が起こるか分かんねえんだ。俺みたいに身軽に生きろや」
「そんな簡単でいいの?」
相変わらずいい加減な考えのナオにそう言うと、ナオは私の頭をくしゃりと撫でて言った。
「お前はさ、何でも真剣に考えすぎるんだよ。もっと身軽に考えてみろよ。お前にできること、やりたいこと、それを考えれば自然に道は拓けるさ」
「…ナオ、今初めて先生っぽかった」
「俺、一応ずっと先生らしくしてたつもりなんですけど」
ナオの言葉に思わず笑みがこぼれた。
ありがとう、ナオ。励ましてくれて。
「ナオ、鞄の中に進路希望調査書入ってるから出して」
「おう。…決めたのかよ」
ナオは私を見る。
私はナオの目を見て微笑んだ。
「決まったよ」