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螺旋の邂逅
【ファンタジー 恋愛小説】

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螺旋の邂逅 vol.2-1

〜2章 中世?

転生し、私は日本の平安時代に左大臣家一の姫として生まれた。
『あの時』の記憶はあった。


「大君〔オオイギミ〕は今年いくつになる?」
と、現在、左大臣として政治の中枢に携わっている父が私に尋ねた。
「今年で16です。」
と、私は答えた。
「…もう16か…。
そろそろそなたも結婚していてもおかしくはない年頃…、聞いた話では多くの文を頂いているそうではないか…。
その中で良い方は居らぬのか?」
そう、左大臣家の一の姫ということもあり、私の元へは私との政略結婚を望む者達から一日に何通もの文が届いていた。この時代、相手の容姿は分からないし、私は全く返事を返さないのによく送ってくるものだと今更ながら感心してしまう。

父の問いに私は、
「…特には居りませんわ」と、答えた。
「そうか…。
そういえば、春宮も大君と歳が近かったな…。」
と、父は思い出すように言った。
「そうですの?
でも、私は春宮さまのお人柄を存じ上げませぬから何とも言い様がございませんわ」
と、言って私は口元を扇で隠し微笑んだ。


父が退室した後
「…姫!
何てことを仰るんですか!」
と、傍に控えて聞いていた女房が私に厳しい口調で言った。
「…何のこと?小納言」
と私が答えると、
「…春宮さまの事に決まっております!
何が『お人柄を存じ上げない』ですか!
春宮さまからも何十通とお文を頂いているではありませんか!!」
と、声を荒げた。

しかし、この時、ラティとの約束を覚えていた私にとっては、直感でラティではないと判断したあとは、たとえ春宮であろうと、その他大勢のなかに入っていた。(春宮は身分を隠して送ってきてたから別に問題はなかったし・・・)
だから、誰にも返事は送らなかった。
まぁ、春宮だけは女房に口うるさく言われ、季節の節目、節目には文を返すようになったが…。

私は腕息にもたれかかり、溜息混じりの声で、
「そうだったわね。
でも、あの方は御身分や御名を偽って私に御文をくださってるし、私はあの方に何の感情も抱いておりませんわ。
それなのに、私が、御名を偽っているとはいえ、春宮さまから御文をいただいていることが知れたら、父上は強引にでも私を春宮妃になさるでしょう…。
それが嫌なだけですわ。」
と、答えた。
「…姫は…大君さまは…春宮さまがお嫌いですか?」
と、言う小納言に私は
「何の感情も抱いておりませんわ。」
と、窓の外の葉の落ちはじめた樹々を見つめながら溜め息を吐いた。


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