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「黄昏の至宝」
【ファンタジー 官能小説】

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「黄昏の至宝」-2

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「ん…?」

夜半、ジェイドは身体に感じる重さで目を覚ました。
身を起こすと、ラルム姫がジェイドに身を預けるような形で眠っていた。

「ラルム姫?」

起こさないようにそっと身体を抜くと、姫の背中と膝に手を入れて抱え、ベッドへ運ぶ。

「ふぅ〜」

ベッド上に姫を横たえると思った以上に大きな溜め息が漏れてしまった。

城を出てから身体を拭くくらいしか手入れをしていないだろうに、ラルム姫からはふわふわとした甘い香りがした。
それが、疲れたジェイドの心を癒す。

こぼれ落ちた姫の髪の毛を一房手に取ると、そっと唇を当てる。
そのまま瞳を閉じ、旅の無事を祈る。

そうでもしないと、このざわついた身体は落ち着きそうになかった。
身体に染み着いた血の臭いがジェイドの中の男を掻き立てる。
深く息を吸い、心を落ち着かせて瞳を開けると、こちらを見つめるラルム姫とバッチリ目が…合った。

たちまちジェイドの心臓は早鐘のように鼓動を打ち始める。

「も…申し訳ございません!」

額を床に擦りつけ土下座をする。
目の前にラルム姫が立つ気配がする。

ふわっとした姫の毛先がジェイドの鼻先を擽る。
謝罪を、土下座をしている最中だというのに、ジェイドは下半身に血流が集まっているのを感じていた。

「顔をお上げなさい」

ラルム姫の凛とした声が辺りに響く。

「疲れているのなら無理をせずに最初からベッドを使えばいいのよ。貴方がベッドを使わないというなら、今夜は私も床で眠ります!」

ラルム姫の細い指がジェイドの顎を捕らえ、クィッと持ち上げる。

「お許しください姫…。どうか姫だけはベッドをお使いください」

射竦めるような瞳がジェイドを捉えた。

「いいえ、なりません。私にベッドを使わせたいなら、貴方も一緒に寝るべきです!」

真っ直ぐにジェイドを見つめるその瞳は譲ることを知りそうにもない。

「血の…血の臭いが身体に染み着いているのです」

「そんなの、私は気にしません!」

「そうではないのです」

力なくジェイドは言葉を紡ぐ。出来るなら、このことだけは姫に知られたくはなかった。だが、ハッキリと言わねば伝わるまい。


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