陽だまりの詩 13-6
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意を決して病院に訪れたが、玄関には思いがけない人物が立っていた。
今日は作業着ではなく私服のようだ。
それにしても、あの人はいつも俺を待っているのか?
近付くと、お父さんも向かってきた。
「……お久しぶりです」
「……」
正直、立ち向かう勇気など今の俺には持ち合わせていない。
「小僧、ついてこい」
「……」
いつだったか、二人で言葉を交わした場所に赴いた。
今日も人はいなかった。
早速、お父さんはタバコに火をつける。
「小僧、お前は奏のことが好きなんだな?」
「……」
相変わらず直球だな…
「どうなんだ」
「……好きです」
「どのくらい」
「…っ」
俺はどのくらい…好きなんだ?
「小僧!!」
すごい声だった。
「…はい」
「てめえが奏のことをどれくらい好きなのかは知らないがな……この俺から奪う自信があるほど好きなんだろうが!」
ハッとした。
そうだ。
奏と幸せになるためなら、お父さんとだって戦ってやる。
そんな強い気持ちを持っていたのに。
なんでこんなところで立ち止まっているんだ。
なんで奏をどれくらい好きかくらいで迷っているんだ。
俺は奏のために立ち止まることなく走り続けなきゃいけないんだ。
じっとお父さんの顔を見る。
この人は…なんていいお父さんなんだ…
「……奏は俺がもらいます」
そう声を絞り出した。
「……」
「奏を愛している気持ちは、お父さんには負けません」
「……くく」
お父さんは声を押し殺して笑った。
「それでこそ小僧だ。行ってこい!」
「はい!」
俺は走り出す。
「春陽!!」
「っ!?」
聞き慣れない呼び名に驚き、後ろを振り返る。
「奏を頼むぞ」
「……はい」
俺は笑いながら走った。
奏のところへ。