光の風 《風神篇》後編-13
リュナの大きく開かれた目は、何を映しているのか分からなくなった。声にならず、吐く息だけの笑いが短くもれる。
リュナは額に手を当て震えるため息を長くついた。その表情は寂しげに微笑んでいる。
「この戦いの意味は?」
表情のわりにハッキリとした口調でロワーヌに投げかけた。ロワーヌはそれに答える。
「セリナを取り戻す、それが終われば意味などないわ。」
強い気持ちが声にも反映した。リュナは額に当てていた手を空へかざし、切るように速度を付けて下ろした。
その瞬間に、自らを覆っていた風の結界が壊れた。
「ならば、連れていきなさい。そして魔物達を撤退させて。」
強い眼差しが真っすぐにロワーヌに向けられる。ロワーヌはリュナに近付き、目の前に立った。
「約束するわ。」
リュナはロワーヌと目を合わさず、真っすぐに前を見ていた。やがてロワーヌは両手を彼女に伸ばし、軽く抱きしめた。
「おかえりなさい、セリナ。」
そして、第2の襲撃が幕を閉じた。