陽だまりの詩 11-6
高校に入ると、長期休暇は入院することになった。
別に外出しちゃだめなわけじゃなかったけど、なんだか病院から出るのが億劫だった。
確実に病気はあたしの寿命を蝕んでいる。
なんとなくそんな気がした。
それに、一人でいる時間はそう長いわけじゃなかった。
兄貴が毎日、仕事帰りに病院まで会いにきてくれる。
必要な物は買ってきてくれるし、寂しくなかった。
それに入院しているほうが、なんだか兄貴を振り回しているみたいで気持ちよかった。
もちろん、兄貴にまた迷惑をかけているという気持ちは忘れてはいない。
でも何だか恋人のようだったから、嬉しくて嬉しくて、入院すると内心はしゃいでいた。
実際、兄貴はあたし一人だけのものになっていたしね。
ほとんど毎日ある病気の診察はきつかったけど、それを吹き飛ばすくらい、その時のあたしは充実していたと思う。
長期休暇は、ずっとこの日常が続くと思っていた。
そんなときに、奏が現れた。