陽だまりの詩 11-4
気が付けば、ベッドの上にいた。
体が重い。
何かがおかしい。
美沙?
兄貴の声だった。
視界に入ってきた兄貴は泣いていた。
誰が兄貴を泣かしたんだ?
許さない。
そうだ。あたしだ。
家で突然胸が痛くなって、それからの記憶はない。
どうやらここは病院らしい。
あたしは病気になったのか。
ごめんね、兄貴。
何日か入院した。
どうやらお父さんの患っていた心臓の病気が遺伝していたらしい。
でも不思議とお父さんを恨むことはなかった。
ただ現実は厳しかった。
退院して家に帰ることはできたけど、自分の体は徐々に弱くなってきているのがわかった。
家事も満足にできなくなって、学校ではおとなしく過ごすのが精一杯だった。
もちろん、体調がいい日はできるだけ努力したけど。
兄貴に嫌われたくない。
でも、兄貴は言ってくれたんだ。
美沙は俺が守るから、って。
その日、あたしは夜通し泣いた。
その頃から、お兄ちゃんから兄貴と呼び名を変えた。
強くなりたかった。
でも、一番の理由は照れくさくなったから。
初めて呼んだとき兄貴は、お兄ちゃんのほうが萌える、なんて言い返したっけ。
あたしの幼少からの作戦がやっと実を結び、兄貴は完全なシスコンに変化した…
と思う。