陽だまりの詩 11-2
あたしはできるだけ暗くなるまで家に帰らないようにしていた。
でも、時折どうしても時間を持て余して帰ってくる。
そうなるとあたしは、母親にばれないように食べ物と飲み物、ランドセルと靴を持って押入に入る。
あたしは毎日、押入にある懐中電灯の灯りを便りに宿題をしていた。
今視力が低いのは、きっとそのせいだと思う。
冬は寒くて震えていた。
夏は暑くて目眩がした。
なぜあたしがこんなことをしなければいけないのか。
常にそんなことを考えていた。
しばらくすると、母親と、知らない男の声が聞こえてくる。
苦しくて、恐かった。
兄貴におしえたかった。
結局、後に兄貴は自分で気付くことになる。
兄貴がそれを知ったとき、あたしを強く抱きしめてくれた。
辛かったろ、と何度も呟いて頭を撫でてくれた。
ますます兄貴が好きになった。