萌えるなら私に-1
『ほら、何やってんだよ。荷物貸せって』
『あ…、ごめん、ありがと』
すずは隼人に遠慮がちに荷物を渡す。隼人はそんなすずの様子を見て舌打ちした。
『なぁ、すず。俺ら付き合ってるよな?何でお前、そんな遠慮してんの?』
『だって…』
『お前、本当ウゼぇし』
……
……
『大好きな彼女に頼りにされたい俺の気持ちくらい、分かれよ』
『隼人…!!』
そう言って隼人は黙って先を歩いて行く。
しかし、
『…!!』
『本当はずっとこうしたかった…』
隼人は驚いた表情を見せる。それもそのはず、すずが隼人の右手を握ってきたのだから。
『…お前、顔赤いじゃん』
『隼人だって、顔真っ赤だよ』
「…隼人ォーッッ!!」
「…ヤベーよ、すず可愛すぎだって!!」
TVの前で騒ぐ私と彼。
彼は田辺剛太。
付き合い始めて1ヶ月になる、私の彼氏だ。
私はこのアニメ「ツンデレなんかしたくない(略して『ツンない』)に出てくるキャラ、山崎隼人に恋をしていた。
隼人に夢中になった私は、原作の漫画、アニメDVD、公式ファンブック等、『ツンない』に関するものを全て集めている。
俗にいう、『二次元オタク』だ。
しかし、剛太が私に告白してきてから私の中で何かが変わっていった。
中学の頃のトラウマによる、三次元の男嫌いは彼のおかげで克服することができた。
今は、剛太の存在が私にとって必要なものとなっている。