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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 10-3

しばらくエレベーター乗り場の前に立って待っていた。
「……お」
やっと下りてきたらしく、表示のランプが一階を示す。

だが、扉が開くと同時にすごい人数が出てきた。
「っと」
俺は予め脇に避けていたものの、人が多すぎるために女性にぶつかってしまった。
その拍子に落としたアイスカフェオレがカラカラと床を転がる。
「あーあ」
ため息をつきながら転がった缶を拾おうと追いかけると、先に正面にいた男性が拾ってくれた。

「ほら、気をつけろ」
「ありがとうございます」

普通に言葉を交わして缶を受け取った瞬間、お互いに声を揃えてしまった。


「あ」


目の前に立っていたのは、作業着姿の奏のお父さんだった。

「お久しぶりです」
「……」

先日、宣戦布告をしたがために非常に気まずい。

一発殴られるくらいは覚悟しておこう。

「小僧、ついてこい」
「え?」

お父さんは先立って病院を後にした。

ついに俺もお陀仏か。

冷や汗をかきながら後を追った。



***

お父さんは歩くのが早い。
慌てて後ろをついていくと、病院の裏手にたどり着いた。

いかにも人の来なさそうな場所だ。
ここで俺を血祭りにあげるんですか…


お父さんはおもむろにポケットからタバコを取り出して吸う。
「……小僧は吸わないのか?」
お父さんは俺にタバコの箱を差し出してくる。

昔、仕事のストレスが耐えられずにタバコに逃げていた時期があった。

今は吸っていないが、進められた場合は素直に貰ったほうがいいのか?

「どうも」
一本くわえると、同時に受け取った百円ライターで火をつけて吸う。

数年振りに吸うと、すぐに頭がクラクラとしてきた。

「……仕事が昼までになってな、暇だから奏に会いにきた」
「……はあ」
唐突にこの人はなに言ってるんだ?
「…そのカフェオレよこせ」
「え、ああ、お好きなのどうぞ」
「三本買うとは気が利くじゃねえか」
「はあ」
お父さんはさっき転がしたアイスカフェオレを取って口にした。


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