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僕とお姉様
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僕とお姉様・最終話〜僕と一緒に暮らしませんか〜-7

「離せバカ!」

僕の腕を全力で拒み続ける。

「純朴そうなフリして子供なんか作って最低!」
「だからそれは誤解で―」
「あたしには何もしてくれないじゃん!キスも事故で片付けたし!」

お姉様はここぞとばかりに不満をぶちまけ始めた。

「優しくするだけしていざとなったらはぐらかすって、どーゆう神経してんの!?」
「じゃあ僕がどんな気持ちで事故って言ったか少しでも考えたか!?」
「あたしが事故って言われてどれだけショックだったかも分かんないでしょ!」
「僕だってあんたから好きな人がいるって言われた時ショックだったよ!」
「その後話も聞かずにいなくなったのは山田じゃない!」
「出てってから僕がどんな思いで―」

ギャアギャアと不毛な言い争いを止めたのは、お姉様の決め手の一言。

「酔っ払ってたってねぇ、好きな人とそうでない人の区別くらいつくのよ馬鹿!!」

息を切らして半泣きで訴えた言葉を、耳の中に閉じ込めてしまいたいと真剣に思った。

「…言い返しなさいよ、バカっ」

すん、と、鼻が鳴るのが聞こえた。両腕が抵抗を止めたのが分かって、僕も掴んでいた手をそっと離した。赤くなった痕がお互いがどれだけ力を入れていたのかを証明しているよう。
抱き締めるなら、今しかない…っ
そう決心したのに。

「い!?」

次の瞬間、僕はお姉様に抱き締められていた。
…………何で?
逆だろ!!!!
せっかく今だって、チャンスだって思って―

「でもやっぱり山田が好き!!」
「…」

心の中でお礼を言います。

「忘れ物して戻って来ただけなの。丁度山田が出かけた所で、チャンスだと思って忍び込んで部屋中探しても見つからなくて、そしたらあの人が入ってきて慌てて押し入れに隠れて…」

そうか、だからあんな所から落ちてきたのか。

「山田に抱き付いて、しかも子供ができたって言うから、何も知らなかった自分が情けなくて…」
「母親だってば」
「またそんな嘘―…」
「だからひばりちゃんがどっちか選ばせたんだよ。あんたに関係ないって言ったのは、そーゆう事」
「…嘘」
「だーかーらー、ぉわっ!?」

お姉様は突然僕を引き剥がした。

「じゃあ何でもっと早く言わないの!?」

…いや、いやいや

「言ったじゃん…」

もう、強く言い返す気にもなれない。
この人はこーゆう人だ。
僕はそれも踏まえてこの人が好きなんだから。

「あたしを探してくれたの?」
「まぁね」

素直に認めると、それまで曇っていた顔がパアッと明るくなる。

「なら、許す」
「どうも。…で、忘れ物って何」
「宝物」
「宝物?」
「忘れちゃ困ると思って一番最初に持ったのに、シーツ替えてる時に無くしたみたいで…、探していい?」
「見つかったらまた行くの?」

聞いても答えずに笑うだけだから、今度は僕が抱き締めた。

「…無くしたままでいて」

それがこんな僕に言える、精一杯の告白。

「意地悪」

しまった。
遠回し過ぎて、通じなかったか…。


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