秋と春か夏か冬〜18話『過去と思い出』〜-5
「でも…美雪さんが羨ましいな…」
「??なんで?」
「だって恭介を支えてくれたんでしょ?僕もそんなふうになりたいもん。だから羨ましい…ううん、少しだけ悔しい、かな?そんな大切な時に恭介のそばにいれた美雪さんが…」
「……おまえにだって充分…いや、すごい感謝している…」
頭を掻きながら、照れくさそうに話す恭介。
「…ホントに?」
「あぁ。さて、そろそろ帰るか」
「そうだね。ところで…本当に全部思い出したんだよね?」
「??あぁ、もう2度と忘れないよ」
「じゃぁ…再会できたから夢は叶ったとして……もう1つの約束…覚えてる?」
恭介は顔を紅くする。
「えっ!いや、あああれは子供の約束だろ?」
俺は苦し紛れの言い訳をする。
「ひっどーい!僕は本気なのにー!男に二言はないって言ったのは恭介だよ?あっ、そうだ♪」
ちょぃちょぃ、と俺の近くに寄ってくる夏輝。そして……
ちゅっ♪♪
恭介の唇と夏輝の唇が合わさった。
当然、恭介は顔を真っ赤にし……
「ななな、なにすんだー!」
「だって〜大人になったらキスして良いって言ったの恭介…ううん、きょうすけくんだよ♪♪」
「いや確かに言ったけど…だからって!!」
だが夏輝の顔はまるで悪びれた様子がない。
「……はぁ」
こんなことまで思い出してしまったのは喜ばしいことなのか、こんなときの夏輝には何を言っても無駄だと言うのも、昔の俺が記憶している。
無駄だと悟り、本日二度目の溜め息をついた。
「さぁ帰ろうきょうすけくん♪♪」
夏輝は再び歩き出す。そういえばさっきから呼び方が昔に戻っている…。
昔の約束か…ったく、変なところで気を使うなっての…。
「夏輝……気をつかうなよ。今まで通りで君づけはしなくて良いから。」
恭介は頬をかきながら、照れくさそうに言った。
「えっ…それって…」
――『みらいの旦那さんにくんづけは変だろ?』――
この言葉が夏輝の脳内をかけめぐる。
「ち、違う!別に他意はないからな」
「…わかりましたぁ♪旦那さまっ♪♪」
目の前には輝かしい笑顔の夏輝がいた。