甘い計画-2
『うまくいくなかな?』
あの喫茶店での会話から一週間。
『へぇ、おもしろそーじゃん。しおりの為に、俺も協力するぜ!』
結局、理沙の彼氏、宮本亮太くんも巻き込んで、圭くん野獣化計画?を実行することになった。
まぁ、内容は四人で遊園地に行って、二人乗りの乗り物には、私は必ず亮太くんと乗ること。そして、何かと楽しそうに、亮太くんといちゃいちゃする。理沙は理沙で、圭くんを乗り物に誘導すると。
要は、シャッフルデートみたいなもので、圭くんに焼きもちを妬かせる。
そうすれば、その日の夜に、怒りに任せて無理矢理ってことになる。
って言う、理沙の計画だった。
正直、そんな子供だましみたいなので、大丈夫なの?って思ってた。
だけど…
夜になり、遊園地で2人と別れたあと、
「ちょっと話しあるから、俺ん家行こう」
圭くんにそう言われて、ついて来たけど、家に向かうバスの中でも、道を歩いてるときも、ずっと無言だった。
いつもはスッと優しく手をつないでくれるのに、今日は一人でスタスタ歩いていく。
家に着いたら、
「俺の部屋に行こう」
それからもう20分。
圭くんは相変わらず無言で、窓の外を眺めていた。
『相当、怒ってるなぁ。これじゃ、無理矢理どころか、別れようとか、言われちゃうかも』
「あの…圭くん…?」
「お前さ、どういうつもり?」
「え…」
無言の空気に耐えられなくなって、話し掛けた私に、圭くんは背を向けたまま、言った。
すごく、冷たい声…
「亮太のことが好きなのか?」
「違う、そんなんじゃない!」
「じゃ、なんなんだよっ!」
その瞬間、圭くんはすごい勢いで、振り向き、私は壁に押しつけられた。
この展開って…
不謹慎にも、私はこの状況に期待をしてしまった。
私の両脇には圭くんの手。後ろは壁。
目の前には圭くんの顔。
これって…
いい感じかも。
これからの展開にドキドキ期待をしてた私の目に飛び込んできたのは、圭くんの冷たい目。
いつもの優しい眼差しはどこかに消え、この世のすべてを凍り付かすような、冷たい瞳。
ゾクッ
初めて見る圭くんの表情に、私は恐怖を感じていた。「まぁ、他に好きな奴ができたとしても、絶対に離さないけどな」
だんだんと近づく、圭くんの顔。
「圭く…」
「お前が俺のこと忘れようとしても、忘れられないようにしてやるよ」
「…!」
あまりの恐怖に、すべてを打ち明けようとした私の言葉をさえぎり、圭くんは私の唇を奪った。
いつもとは全然違う、乱暴で激しい、ディープキス。怖さと息苦しさで、圭くんから逃れようとしても、左手で顎を押さえられ、身動きが取れない。
「んんっ…!」
圭くんの舌が執拗に私の舌に絡んでくる。
私のすべてを味わうように、舌を這わしたあと、ようやく私は圭くんの唇から解放された。
「んはっ、はぁはぁ、」
大きく息を繰り返す私に、圭くんが、
「どうした?まだまだこれからだぜ?」
冷たい瞳のまま、にやりと笑った。
怖い…
こんなの、本当の圭くんじゃない。
こんなつもりなかったのに。
浅はかな考えで、バカな計画をした自分自身を、本当に嫌いになった。
でも。
後悔しても、もう遅い。